博士は、最近出版されたエッセイ集『Brief Answers to the Big Questions』のなかで「超人類」の登場を予言。彼らは遺伝子編集を選択して競争優位性を獲得するとしている。
この予言は、同書に含まれる、ブラックホール、AI、神…など、Big Questionに対する博士のAnswerのひとつだ。
・富裕層から遺伝子編集を選択する人が表れる
人類は2012年に、酵素による分子バサミでターゲットとなるDNAの鎖を切り貼りできる技術「CRISPR/Cas9」を発明した。これにより有害な遺伝子を改変したり、新たな遺伝子を追加することが可能となったのだ。
今も研究が進められるCRISPR/Cas9だが、すでに白血病やHIVの治療がおこなわれるなど、実用への期待が高まっている。
ただ、ホーキング博士が指摘するように、記憶の改善や病気の抗体の獲得、寿命の延長など、人間の特性を改変する目的での遺伝子編集には規制が働くと考えられる。つまり遺伝子編集が即、一般的な自己改善ツールになるとは考えづらい。
それでも博士は、一部の人が欲望に抗えず遺伝子編集に踏み切ると指摘。遺伝子編集を選択できる裕福な人から超人類が発展するとの見通しを立てている
・「超人類」と旧人類の間のギャップが社会問題に
また博士は、ひとたび人間の不完全さを補うブレイクスルーが起これば、旧人類とのあいだにギャップが生まれ、これが大きな社会問題に発展するとも述べている。知性や超人的な肉体を得た「超人類」は能力に差のある旧人類を淘汰する存在となるほか、彼らにとっては子孫を残すことや死すらも重要なものではなくなるという。
その替わりに、遺伝子編集による自己設計の改善に焦点が当てられ、新たなルールのもとで人類の競争が始まるのだ。
類似した指摘は、『ホモ・デウス』の著者ユヴァル・ハラリ氏からも出ており、寿命を編集することに対する人類の欲望が、生命倫理を超えるか超えないかの時期に差し掛かっていることは間違いなさそうだ。
参照元:Essays reveal Stephen Hawking predicted race of 'superhumans'/The Guardian