利便性が向上した一方で、まったく理解できないシステムの上に日常生活が成り立っていることについては不安を覚えることもあるだろう。
こうした現代人の無知と不安感を少しでも解消すべく、魔法を解剖してビジュアライズする試みが登場した。
ニューヨーク大学のAI研究機関「AI Now Institute」の共同創設者であるCrawford教授らは、コンシューマー向けAIガジェットの代表格、Amazon Echoを動かしているシステムの解剖学的な地図を発表した。
・AIシステムを網羅的にマッピング
同作品は高さ2メートル、幅5メートルと巨大なもので、データ処理プロセスやシステム運用プロセス、製造プロセス、流通プロセスおよび各プロセスに要するリソースが網羅的にマッピングされている。Crawford教授は、AIシステムが世界に与える影響力について、司法や医療など社会や生命活動のフォーマットを変える重要な機関に組み込まれていることから、これまで起こってきた技術革命とは一線を画すインパクトがあるという。
またコンシューマーは、無自覚にではあれサービス利用毎にデータを提供しており、それがAIのトレーニングやマーケティングに活用されている点で、じつは労働者でもあることを指摘。これは、今までにない労働の新しい形で、だからこそプロバイダーもコンシューマーもAIシステムにもっと自覚的であるべきだという。
・70万年の児童労働はJeff Bezosの1日ぶん
表面的なニーズにのみ気を取られサービスを提供/利用していると、例えばFacebookやユーザーがケンブリッジ・アナリティカ問題で直面したような状況に陥りかねない。こうした問題が表面化するのはニーズが発見されてから数年かかることがあり、サービス提供側すら隠れたコストを見通せないことに課題がある。
隠れたコストは、さまざまなレベルで発生し得る。例えば、AIのトレーニングには、80個のGPUと640個のヴァーチャルCPUが使われていて、当然これらを動かすための電気が必要となる。
また、AmazonのCEO、Jeff Bezosが1日で得る報酬を末端の児童労働者が得るには、70万年間働き続ける必要がある。こうしたサービス提供の代償にはユーザーはもちろんプロバイダー内部の人ですら無自覚だ。
「AI Now」が注目しているのは、AIシステムに関する社会的説明責任で、ぜひ、こちらから確認できる地図全容にて、普段何気なく利用しているサービスへの認識を深めていただきたい。
参照元:This beautiful map shows everything that powers an Amazon Echo, from data mines to lakes of lithium/The Verge