そこで、強迫性障害の治療に電磁波デバイスを使おうというアプローチが登場。デバイスを開発するBrainsWay社は、2013年にはうつ病治療のための電磁波デバイスを展開している。
このほど、米国食品医薬品局(FDA)より販売認可が下りた、強迫性障害を治療する電磁波デバイスについてご紹介していく。
・脳の深部に磁気刺激を与えて治療
もともと、脳卒中や片頭痛、うつ病など脳の神経活動に関わる疾患に対しては、電流や磁気、超音波などを使って脳を刺激する治療アプローチがとられてきた。たとえば、電流や磁気で頭皮を刺激して精神疾患を治療する「経頭蓋直流刺激(tDCS)」や「経頭蓋磁気刺激(TMS)」のようなものが一般的だ。
また、「深部脳刺激(DBS)」のような、電極を脳の深部に埋め込んでピンポイントで必要な部位を刺激する治療法もある。
これに対してBrainsWay社の開発したデバイスは、「深部経頭蓋磁気刺激(Deep-TMS)」というアプローチをとっている。
・非侵襲的な治療が可能
Deep-TMSでは、強力な電磁波により脳を刺激。従来のTMSデバイスに比べて深部が刺激できる。また、DBSデバイスと違って刺激するのは表面のみなので、非侵襲的な治療が可能となる。近未来的なパーマ促進器のような外見のデバイスで、磁気コイルによって脳の前部の深い領域を刺激する。今回開発の電磁波デバイスは、うつ病治療のデバイスを応用したものだが、磁気コイルは強迫性障害治療に特化したものを新規に開発。刺激する脳の部分が異なる。
ちなみに、今回のFDAの承認は、100人の臨床試験からのデータが根拠となるようだ。
・38%の患者で30%以上症状が軽減
100人の強迫性障害患者のうち、49人がBrainsWayによる電磁波デバイスで治療を受け、51人が擬似デバイスによる治療を受けた。25分間の治療セッションを週に5回、計6週間おこなった結果、電磁波デバイスによる治療では、38%の患者で30%以上の症状軽減を認めたのに対し、擬似デバイスでの治療では11%の患者のみだったとのこと。
いまのところ、同電磁波デバイスは医療機関での利用のみ可能で、家庭用には販売されていない。
BrainsWay社は同様に、禁煙やPTSD、双極性障害…など他の精神疾患治療の領域にも切り込むことを検討しているようで、うまくいけば精神疾患に悩む多くの方を症状から解放できそうだ。
参照元:BrainsWay's Brain Stimulation Device Receives FDA Approval to Treat Obsessive-Compulsive Disorder/IEEE Spectrum