そうなると無視できないのは、電池製造時と処分時の環境への負荷。リチウムイオン電池はもちろん太陽電池についても、製造過程でエネルギーを大量に消費していることが多く、自然に還らない重金属やポリマーなどの素材で作られている。
低コストかつ環境にやさしい電池が求められるなか、ニューヨーク州立大学の研究者らは、細菌を利用した紙ベースの電池を開発。実用化に向けて改良を進めている。
・低コスト製作できて自然の中で分解される
ある種の細菌は、呼吸によって有機物からのエネルギー変換をおこない、しかも細胞の外に電子を渡すことができる。研究者らはこのような性質を持つ細菌を電池に組み込んだ。研究者らが、最初に紙ベースの微生物電池を開発したのは2015年のこと。製作コストはわずか5セントに抑えることに成功した。
その後2017年には、スペイン、カナダ、米国の研究者らとコンポストに捨てられるセルロース製電池を制作している。
研究者らは紙ベースの微生物電池に改良を重ね、約4ヶ月の寿命を持ち、使用後は自然の中で分解されるものとなった。
・センサーやIoTデバイスと好相性
最近の発表では、細菌の生存寿命を改善する方法や微生物電池を活性化する方法を説明している。それによれば、細菌は凍結乾燥して電池に組み込まれ、水を加えることで活性化するとのこと。微生物電池の最大出力は4μW/cm2で、電流密度は26μA/cm2。これは従来の紙ベースの微生物電池よりも著しく高いものだ。
しかし、実用可能なものにするには、電力/電流密度を約1000倍にしなければならないとのこと。
研究者らは微生物電池の性能改善に取り組んでおり、将来的には何十億ものセンサーやIoTデバイスに電力を供給するものになることが期待される。
参照元:How Paper Batteries Charged by Bacteria Could Power the Internet of Things/IEEE Spectrum