今回ご紹介するのは、そんなバイオプリンティング技術を、宇宙空間でも使えるようにしようとの取り組みだ。
・微小重力でも生体素材が浮き上がらないよう制御
バイオ3Dプリンタでは、生体素材や細胞を圧迫した層を何枚も重ねることで機能する。宇宙空間で3Dプリントする際には、ジェル状の素材が空中に浮きあがってしまうのを回避するために、生体素材を送り込むプロセスを制御する必要がある。
Allevi社は、微小重力環境下で生体素材をうまく送り込むができる特殊な機器を設計。国際宇宙ステーション(ISS)に2台の3Dプリンターを導入したMade in Space社製の3Dプリンタにセッティングできるようにした。
同バイオ3Dプリンタを使えば、例えば宇宙飛行士が、大火傷をおってしまった際に移植する皮膚をプリントできる。あるいは、火星移住が実現したあかつきに、現地で肝不全が発症した際の移植組織がプリントできれば心強いだろう。
・ISSへの導入にはまだいくつものハードルが
近い将来、ISSにて実際の無重力空間でバイオ3Dプリンタを試したいAllevi社だが、実際ISSに持ち込むためにはまだいくつものハードルがあるという。まず、バイオ3Dプリンタが動作する際に発生する熱を制御する必要がある。微小重力空間では空気の対流がほとんど起こらず、したがって機器の冷却が地球のようにはいかないのだ。
また、NASAに交渉するか、ISSに関わる研究者を巻き込むかして、バイオ3Dプリンタの導入を認めてもらわくてはならない。
当然NASAの規格に適合しなければならず、例えばすべての生体素材がISSへ持ち込めるかや、万が一故障した際の安全性などもチェックしなければならないだろう。
宇宙空間でのバイオプリンティング技術は、将来的に必ず有用となってくるもので、実用化に向けて着々と現状の課題をクリアしていくことが望まれる。
参照元:One Small Step Toward Printing Replacement Organs...in Space/IEEE Spectrum