その理由は、生物学の実験には生きている細胞を使う必要があり、キットにこれを含めるのが難しいからだ。
多くの研究者が、実験キットに触れたのをきっかけに科学の道に進むことを考えると、生物学の実験キットがもっと身近であってもよいだろう。
そこでMITとノースウェスタン大学の研究者らは、家庭でも簡単にDNAによるタンパク質合成ができるキットを開発した。
・DNAによりタンパク質が合成されるのを観察
「BioBitsキット」を使えば、DNAがどのようにタンパク質を合成するかが観察でき、学生自身がDNAの合成プロセスをデザインできる可能性があるという。従来、細胞を生きたまま保つには高価な装置が必要だったが、研究者らは細胞の構成成分を凍結乾燥して保存する技術を開発。実験の際は水でもどして培養できる。
おかげで、安価で安全、保存性にも優れた実験キットが製造可能となった。
光を放つタンパク質をベースにした観察キットには、DNAがタンパク質を合成するのに必要な細胞成分の入ったチューブと、数種類の色のタンパク質を合成するDNAが含まれている。
・生徒30人が100ドル以下でDNAの実験を試せる
このキットを用いた実験は、DNAの量や培養時間、反応の温度を調整して反応を試すことができる。しかも、生徒数30人の教室での実験が100ドル以下で済むという。また、見た目でなく香りやセンサーで反応を確認するキットも開発していて、バナナやキウイなどから抽出したDNAで実験できる。
すでに、シカゴの小学校から高校までの学生がキットを試していて、実験を成功させているとのこと。
研究者は、この画期的な技術を子供だけでなく、生物学を再学習したい大人用のもの開発したい考えだ。
「BioBitsキット」は、キッチンで生物をデザインするような、バイオハックを身近なものにしてくれるだろう。
参照元:Inexpensive biology kits offer hands-on experience with DNA/MIT News