前編では、立ち上げフェーズのベンチャー企業はビジョンよりもまずは、顧客にニーズにあったサービスを創りひたすら数字を追うことが成長の鍵だと伺った。後編では新規事業をグロースさせる上で抑えておきたいことや今後の事業構想についてクルーズ株式会社 取締役最高執行責任者COOの仲佐義規氏に語ってもらった。
リピート率を上げるにはできることをやりきる
Q5.SHOPLISTでリピート率を向上させるための秘訣があれば教えてください。
SHOPLISTに限らず、今までやってきた事業全体に共通して言えるのが、時間がかかるということです。事業をグロースさせる上でリピート率を上げるためには、ファンになってもらわなければなりません。しかし、施策自体がこて先だと、短期的には購買促進に繋がったりはしますが、結局のところリピートしないのが現状です。つまり一番肝になる数字ゆえに一番成果を出すのが難しいとも言えます。ユーザーの購入率は半額などのフラッシュセールでなんとか高めることはできますが、ユーザーの購買体験をどう作りこむかでしょうね。例えば、在庫を保管する倉庫を拡張して配送スピードを早くするとか、商品のピッキング専用のマシンを導入するなど、スモールスタートしやすいものから手を打っていくのがいいと思います。また、どの会社もやっていると思いますが、スモールスタートした施策の中でABテストで効果検証したり、もともとある情報や数字を読み取って施策に活かしたりしていますね。
立ち上げフェーズは進捗を毎日確認する
Q6SHOPLISTやSHOPZONE、 TRAVELISTなど様々な新規事業が生まれるなかで、PDCAをうまく回すコツはありますか?
新規事業をやる上でまず大切なのは、進捗状況の確認を週単位ではなく毎日やることですね。特に立ち上げフェーズの場合、1週間待っているだけで事業の進捗に影響したりもするので、自分で決めた数字を自分自身で日々改善しながらとにかく動いていました。会社のため、社長のために仕事しているわけではなく、ライバル会社に負けないため貪欲に事業を伸ばすことだけに集中し、即時即決を意識しながら行動すれば、キードライバーとなる数字が見えてきます。それをもとに、さらにPDCAを回して行く流れですね。だからボスがいないベンチャー企業の方が成長スピードが早いだろうし、一気に爆発する可能性を秘めているわけです。ある程度手放しした方ががうまくいくと代表の小渕もわかっていたので、そういう環境にしてくれたのも、クルーズが成長できた要因だと思っています。
Q7.最近の報道ではファストファッションブランドの売り上げが縮小していると言われていますが、SHOPLISTとして何か対策はありますか。
とにかく今できることをやり続けるのが最善の策だと思っています。ブランド本体ができない販促の仕方など、SHOPLISTならではのユーザーアプローチができることを逆にチャンスと捉えてやるだけですね。EC市場自体は伸びているマーケットなので、まだまだ拡大していけると思っています。具体的な販促方法は動画コマースやインスタからの導線などたくさんあります。しかし、あくまでも売り方の問題で、ユーザー心理をつく魅力的な商品を販売しなければ売れません。SHOPLISTに関しては分社化し、事業会社として独自のビジョンを追いかけながら今後事業展開していきます。新規ユーザー獲得に向けての施策として、まず多種多様なキャスティングを行ったTVCMを打ったり、オウンドメディアであるLiSTAと連動したりして、今までアプローチできなかったユーザーにも認知拡大できるプロモーションを展開していきます。
1兆円の事業を1つ作るよりも100億円の事業を100人の起業家で創る
Q8.最後に今後の展望について教えてください。
既存のSHOPLISTとともにTRAVELISTなど第二、第三の収益基盤となる事業を育てていきたいと思います。クルーズでは、「永久進化構想」を掲げているのですが、どんな状況であれ儲かるか儲からないか、規模感はどのくらいまで伸びるかを経営者視点で捉えることを大切にしています。ネタは組み合わせなので5個か6個くらいは常に持っていて、それをどう組み合わせるかで伸びそうかを判断しています。私自身、個人的にはビジネスの儲けの種は常日頃ストックしていますが、それを全部試すかというとそうではなく、個人でやるものと企業としてやるものとの規模感を意識しなければなりません。インターネットの業界はスピードがめまぐるしく早いので、1兆円の事業を作るよりも100億円の事業を100人の起業家が作るほうが変化に柔軟に対応できます。今後としても、クルーズは優秀な経営者を輩出しながら、世の中に価値あるサービスを提供できる企業体を目指していきたいと思います。
クルーズの掲げる永久進化構想。世の中的な文脈を理解するのはもちろんのこと、マーケットを見極める力や徹底的に投資をして、PDCAをどんどん回していくというスピード力があってからこそ実現できるビジョンであり、今後の事業展開に注目していきたい。