CROOZ(以下クルーズ)は創業以来メインの柱となる事業を5回もシフトしている珍しい会社。普通であれば、何回も事業を変えること自体、軸が定まっていないと思われてしまうところ。しかしクルーズの場合、インターネットという変化の激しい波にアジャストした結果として事業をシフトしている。今回はクルーズ株式会社 取締役最高執行責任者COOの仲佐氏に話を伺った。
立ち上げ期はビジョンファーストよりも利益ファーストこそが大切
Q1.クルーズは創業以来、 メイン事業を5回以上も変えてきたにも関わらず、なぜ17年間赤字を出さないでいられるのでしょうか。
弊社には立ち上げの頃からお金に関してはシビアに見ることができるメンバーが揃っていたからだと思います。言葉が悪く聞こえてしまうかもしれませんが、「どうやったらお金儲けできるのか」というのを貪欲に考えていましたね。数字へのこだわりが強いメンバーが集まっているからこそ、17年も赤字を出さずに事業展開してこれたのだと思います。特に立ち上げ当初に関しては、自分たちのやりたいことや会社のビジョンも大事なんですが、まずは顧客が求めるサービスを提供して、利益ファーストで事業を回すことがとても大事だと思います。
何を受け取るかよりも誰が受け取るか
Q2.事業を回していく上での重要指標となるKGIやKPIを正しく設定するコツはありますか。
そもそも、他社がうまくいっている成功事例を分析して、何がうまくいって、何がうまくいっていないかを把握することで、キードライバーとなる指標が見えてくると思います。ただ、極論言ってしまえばKGIやKPIを設定しなくても今何をやれば売上が上がるかをしっかりと理解することですね。世の中の時流を見極めて、シンプルに今後伸びそうなものを徹底的に攻めていけばよいと思います。もちろんこれから伸びそうな事業の種や、今利益が出ている会社の経営者の話など、いろいろな情報を収集するのも大切です。しかし、一方で「何を受け取るかよりも誰が受け取るか」が非常に大切なんです。同じ情報を聞いても、情報感度の高さの違いや自分ごととして考えられるかどうかで全然捉え方が異なってきます。分かりやすい例で言えば、会社に所属して仕事をしているのか、自分で稼ごうとしているのかの違いです。自分の口座から1万円引き落とすのは躊躇してしまうけど、会社のお金だと誰も気にしないで経費を使いますよね。先ほどもお話しましたが、いかにお金に対してシビアになれるかが肝になります。
変化に強い会社と言われる理由
Q3.ゲーム事業からEC関連の領域であるショップリストに経営資源を集中させたマインドセットについて教えてください。
ショップリストは2012年から始めて、2016年のゲーム事業を売却する頃には150億円くらいの売り上げボリュームに成長していました。この成長があったからこそ、ゲーム事業を売却するという意思決定ができたのです。これは、創業以来同じで、何か基盤となる事業の柱があった上でメイン事業の変化を繰り返しているのです。これが、クルーズが対外的に「変化に強い会社」と言われる理由かもしれません。ショップリストに関しては将来性が十分あると判断し、さらに経営資源を集中することでグロースできる確固たる自信がありました。なので、ゲーム事業が当てづらくなったから仕方なく売却したという後ろ向きな理由ではありません。
中長期的な事業展開のことは正直あまり考えていないです。目の前のことがうまくいってないのに、先のことがうまくいくわけないですよね。ITの領域はスピードが速いので、あまり長期的な視点で見ても意味がないと思っています。今一番利益が上がる事業にとことん投資して最大限の結果を出すことが大切なんです。
Q4.ショップリストは現在200億円を超える事業に成長しました。立ち上げフェーズの際に苦労した話を伺えますか。
実を言うと、クルーズとしては2007年から通販事業をやっていましたが、全然鳴かず飛ばずの状況でした。カニなどの食料品から服、コスメまでそれこそ何でも売るモール事業に取り組んでいたのです。ただ、色々な施策を試していきながら、ファストファッションに特化した形に方向転換していきました。先ほども言いましたが、利益がしっかり出る前にビジョンばかり追いかけてもしょうがないと思っています。つまり、事業を伸ばしながら並行して今のショップリストのブランドイメージを作りましたし、しっかりとしたKPIやKGIを設定していった感じですね。ユーザーであるお客様は、会社のビジョンに興味はなく、いかに気持ちよくショッピングができるかどうかが大事なんです。もちろん、ビジョンも大切なのですが、最初から固執しすぎてもダメで、立ち上げ期は色々やってみて、キードライバーとなる光明を見つけることが大切です。最近では、ネットですぐに情報が手に入り、海外のフレームワークなどを参考に事業の取り組みを行うこともあると思いますが、あまりそこにこだわりすぎるのも本質を見失ってしまいます。今やるべきことを的確に捉え、事業のPDCAをしっかりと回していくこそがビジネスに必要だと思います。(後編に続く)