例えば、脳腫瘍がある患者では、数カ月前の脳の画像を直近のものと重ね合わせて、腫瘍の小さな変化を分析することができる。
ただ、医用画像処理システムが発展してきたとはいえ、処理負荷の高いこのプロセスには2時間以上かかることもあり課題となっていた。
このほどMITの研究者らは、医用画像の重ね合わせ処理を1000倍以上に高速化する技術を開発。医療での画像診断にまたひとつイノベーションが起きたようだ。
・機械学習て整列パラメータを推測
MRI検査から得られる3D画像は、膨大な数の2D画像や3Dデータから成り立っていて、これらすべてを重ね合わせるのにはどうしても時間を要する。
さらには、たとえ類似した画像でも、全く同じものではないため、新しい画像の処理をおこなう際には、また一からの作業となっていた。
そこでMITの研究者らは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、MRIからの画像7000枚にてトレーニングを実施。その際、画像整列に関する情報を抽出して、最適な整列パラメータを推測できるようにした。
機械学習には、画像のパターンごとに新たなトレーニングデータを要するものもあるが、今回のアプローチでは、追加データなしに処理が実行できる。
要するに、新しい画像を処理する際にも、整列に最適なパラメータをシステムが推測し、正確で素早い処理が実行できるというわけだ。
・1秒以下での医用画像処理も
250回の判定処理では、通常のコンピュータでの処理時間が1~2分に、最先端のGPUを使用すれば1秒以下に短縮でき、しかも最先端の医用画像処理システムと同等の精度だった。
また、手術の進行状況をリアルタイムで確認することも可能で、例えば、脳腫瘍を切除する手術などで、前後の画像を比較しそれに応じた対応をすることも可能。
「VoxelMorph」と呼ばれるこのアルゴリズムは、現時点で17の脳領域で活用できる。応用の効く技術なので、すでに肺の診断画像でも研究が開始されているようだ。
これまでには不可能だったスピーディーな画像診断を可能にする同アルゴリズムの横展開に期待したい。
参照元:Faster analysis of medical images/MIT News