・70年代から続く研究がようやく形に
今回の研究は、Wi-Fiを使って、壁の向こう側の人を見るというもの。成果を発表したMIT CSAIL(Computer Science & Artificial Intelligence Lab)によると、“透視”技術への取り組みは、最近始めたことではなく、70年代からずっと続いているという。
プロジェクト主任のディナ・カタビ氏は、「2013年頃には、壁の向こう側にいる人間を、正確に追跡できるようになっていた」と語る。当時は、ぼんやりとした輪郭を追うだけで、その場にいる人が何をしているかまでは、判断できなかった。そこから5年。今では、動的骨格や姿勢も、明確に捉えられるようになった。
・ニューラルネットワークを使って人間の体の動きを解釈
動作判断の精度を上げるため、チームが利用したのがニューラルネットワーク。人間の頭部、肘、膝など、身体における14の主要部分の動きを解釈するよう、徹底的に訓練を重ねた。
スタート時には、AIを訓練するためのデータセットは、まだ存在しなかったため、ワイヤレスデバイスとカメラの両方でキャプチャした画像をベースに、手動で人間の動きの棒状図を作成。 WiFi信号とともに、ニューラルネットワークに数字を示すことで、無線ネットワークが、人の体から跳ね返るシステムを構築した。
カタビ氏いわく、この“透視装置”は、さまざまなシーンで活用できるという。例えば、警察ドラマの中に出てくるこんな場面。「(容疑者確保のため)警察官はドアの向こうで、誰かが武器を持っているか、装置を使えば、簡単に知ることができます」。他にも、パーキンソン病やアルツハイマー病、多発性硬化症といった、神経変性疾患用の医療アプリケーションへの採用も可能だそう。
有効利用が期待される反面、懸念すべきはプライバシーの侵害。カタビ氏も、監視カメラ的役割を担わないよう、十分注意する必要がある、と述べている。いつの時代も革新的な発明には、こうした不安がつきまとう。悪用されないことを願うばかりだ。
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