ところで、「中央機関の検閲」という、大手SNSにとっての共通課題を意識したPTTは、対策としてブロックチェーンへのプラットフォームの移行を検討しているようだ。
最近ではFacebookがブロックチェーンの専門チームを立ち上げるなど、大手SNSがブロックチェーン活用を探る動きが見られるが、そのメリットと実現性はどれほどのものだろうか。
・ユーザー自身がデータを管理
独自の経済圏が作れることに目が行きがちなブロックチェーンの活用メリットだが、ことSNSに関しては、ユーザーが自分のデータを管理できてプライバシーが保てる点もメリットとして大きい。
恒久的なブロックチェーン上のデータに対しては、政府や運営者による勝手な検閲の余地がない。このため、ユーザーは発言の削除や書き換えの心配がなく、自由な発言が保証される。
また、データのログが分散して台帳に書き込まれるので、自分のデータが勝手に利用されていないかを監視しておける。
さらには、データを暗号化した状態で細切れにし、匿名のまま利用サービスや第三者に提供することも可能だ。
ただ、プラットフォームのブロックチェーン上で構築するには大きな課題もあり、PTTも苦労しているようだ。
・IOTA上にプラットフォームを構築
まず、データ追加速度の問題。新しいデータを追加するたびに、整合性確認のための承認作業が発生するブロックチェーンは、必ずしも活発なSNS運営に適したものとはいえない。
例えばEthereum上にシステムを構築した場合は、1秒間に11エントリーしかさばけず、遅延に耐えられるユーザーはいないだろう。
この問題を解決するために、PTTは効率的に承認作業をおこなうIOTA上にシステムを構築し、高速処理を実現しようとしている。
・GDPRでのパーソナル・データの定義がネック
さらに、大きな壁となって立ちはだかったのが、EUが5月25日に施工した個人保護規則、GDPRへの準拠だ。GDPRでは、パーソナル・データの定義を「識別子を参照して直接的または間接的に個人が特定できるデータ」と定めていてかなり広範なもの。
ユーザーが申請すればパーソナル・データを削除することが求められるが、ブロックチェーンの特性として、取引記録などのデータは恒久的に残ってしまい、このことがあだになる可能性がある。
Steemitをはじめ、AKASHA、Mindsなど、ブロックチェーン上には既に実働しているブログコミュニティやSNSがあり、これらを参考にしてブロックチェーン上にプラットフォームを構築することの妥当性や解決策を探っていく必要がありそうだ。
参照元:3 Obstacles to Moving Social Media Platforms to a Blockchain/IEEE Spectrum