顔認証技術を応用し、その60%以上が絶滅の危機に直面している希少な霊長類の保護に役立てるのが狙いだ。
・顔画像をもとに90%以上の精度で個体を識別
「PrimID」は、人工知能(AI)が画像分析を行うための学習手法「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)」を応用して開発された独自プログラム「PrimNet」をベースとするAndroidアプリだ。
キンシコウ、チンパンジー、キツネザルのいずれかに属する14種280個体の画像1万1637件をまとめたデータセットを使って「PrimNet」の顔認識の精度を検証したところ、「FaceNet」や「SphereFace」といった既存のオープンソース型システムよりも優れた精度を記録している。
「PrimID」には、顔画像をもとに個体を特定する検索機能と、2つの個体の顔画像の類似性を比較する認証機能を搭載。
対象となる個体の顔をスマホで撮影し、このアプリにその画像を取り込むと、90%以上の精度で個体識別ができる仕組みだ。
・顔認識システムが絶滅危惧種を救う!?
絶滅危惧種における個体数の減少を食い止めるためには、人為的な介入が不可欠だ。
しかしながら、従来、絶滅危惧種の保護に用いられてきた追跡システムは、400ドル(約4万4000円)から4000ドル(約44万円)と高価なうえ、個体へのタグ付けには時間がかかり、個体を傷つけたり、その社会的行動を阻害するなど、悪影響をもたらすリスクもある。
「PrimID」のような顔認識システムは、絶滅危惧種の保護に役立つ手段のひとつとして、まだまだ活用の余地がありそうだ。(文 松岡由希子)
Michigan State University