その研究成果をまとめた論文が、2018年4月、学術雑誌「Advanced Healthcare Materials」で公開されている。
・低コストで製造できる色覚補正コンタクトレンズ
ヒトの眼の網膜にある錐体細胞は、光を感じる光受容器で、長波長に反応する「赤錐体」、中波長に反応する「緑錐体」、短波長に反応する「青錐体」の3種類が存在する。
物体から反射した光の波長にこれら錐体細胞が反応して電気信号が生じ、この電気信号が視神経を通じて脳に伝わり、色を知覚しているというわけだ。
しかしながら、いずれかの錐体細胞を持たない場合、脳は“誤った情報”を受け取るため、色の弁別に困難が生じてしまう。
そこで、研究プロジェクトは、545ナノメートルから575ナノメートルまでの波長域の光を吸収する鮮紅色の塩基性染料「ローダミン」で、ソフトコンタクトレンズを染める手法を考案。
「赤錐体」と「緑錐体」とが同時に反応する波長域を「ローダミン」に遮断させることで、赤と緑のそれぞれの色を弁別しやすくするのが狙いだ。
研究プロジェクトでは、赤や緑の色の弁別に困難が生じる「赤緑色覚異常」の人に、この色付きコンタクトレンズを試してもらったところ、色覚に改善が認められた。
・近々、臨床試験にも着手
この手法は、コンタクトレンズの染色に複雑な準備は必要なく、ヒトの眼に無害で、眼鏡とコンタクトレンズのいずれにも、低コストで簡単に適用できるのが利点。研究プロジェクトでは、近々、このコンタクトレンズの臨床試験に着手するとともに、この手法を様々な色覚補正に応用するべく、さらなる研究をすすめる方針だ。(文 松岡由希子)
University of Birmingham