そんな問題を解決してくれるのが、この「VACAN(バカン)」。店舗の空席や行列の状況をクラウドで一括管理し、デジタルサイネージに表示。混雑時でも効率よく行動できる、期待のシステムだ。
今月から、相鉄ジョイナスと髙島屋横浜店に本格導入された本サービス。開発を手がけたバカンの代表取締役、河野 剛進(かわの たかのぶ)氏に、話を聞いた。
・利用者からも大好評
Q1:まずは、このようなサービスを提供するに至ったきっかけから、お聞かせください。
子どもが生まれたことが、きっかけです。商業施設に行ったとき、ランチ行列で待たされ子どもが大泣きしてしまい、それまでは楽しかったのに、(仕方なく)家に帰ったことがありました。授乳室やトイレへ、すぐに連れて行けるかもわからず、外出が怖くなったこともあります。
会社でも、無駄なトイレの待ち時間がなくなれば、早く帰って子どもと遊べるな、と思いました。リアルタイムの空き状況がわかれば、本当に自分がやりたいことに集中できます。(そのシステムがあれば)よりよい世界に変えていける、と考えるようになりました。
Q2:2月1日から、相鉄ジョイナスと髙島屋横浜店2店舗に、本格導入されました。お客さまからの反響は、いかがなものでしょうか?
昨年年8年から10月までの実証実験を通して、利用者の顧客満足度が非常に高いことは、わかっていました。施設側からも、本サービスに対するポジティブなご意見や、たくさんの期待を頂戴しております。
本格導入後は、現地でお客さまが利用している状況を、(ダイレクトに)見ました。「すごいね!」「これは、便利だね」と話しながら、弊社のデジタルサイネージから、お店を選んでいる姿を拝見して、大変うれしくなりました。
・店舗側と客側、双方のニーズを満たすシステムを開発
Q3:サービス開発にあたって最も苦労したのは、どのようなところでしょうか。
AIやIoT技術も非常に重要ですが、いかにしてお客さまと店舗を幸せにする仕組みを提供できるか、そのことを考え抜くのに苦労しました。
店舗側としては、駐車場の満空表示のように、「満」を出せばいいということではなく、できれば並んでほしい。弊社では、そのニーズを満たすため、特許技術である“Vacant-driven Display Optimization(VDO)”という仕組みを開発しました。リアルでの混雑状況を踏まえて、お客さまと店舗にとって、最も良い状態でデジタルサイネージを表示するサービスです。これを提供することで、課題を解決しました。
Q4:導入先はこれ以降も増やしていかれるのでしょうか?今後の展開について、教えてください。
まずは、日本の都市圏から中心に、導入店舗数を増やしていきます。2020年のオリンピック時には、混雑が至る所で発生すると予想されます。それまでに国内で着実にサービスを広げ、(日本に来た外国人にも)よりよい体験を提供できるようにしたい、と思っています。
グローバル展開も、創業当時より考えております。特にアジアを中心に、混雑が発生している地域から優先的に、サービス展開していく予定です。世界中で、「どこが空いている?」と尋ねたら、「vacan it!」という返事がくるようにしたいですね(笑)。
「VACAN」は現在、相鉄ジョイナス・髙島屋横浜店内11店舗で展開中。施設内におけるデジタルサイネージの設置も、今後増やす予定だ。同社がめざす「人は多いが、混雑はない」という世界の実現も、夢ではないかもしれない。(取材・文 乾 雅美)
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