この手法を活用し、「熱共振器」と呼ばれる小型デバイスを世界で初めて開発した。
・昼夜の気温変化を電力に変換
“熱浸透率”とは、「どれくらい速く、熱が素材を伝播するか」と「一定の素材にどれだけ多くの熱を蓄えることができるか」、つまり熱伝導と熱容量の特性を組み合わせたものだ。
温度変動を電力に変換するためには“熱浸透率”が最適化された素材を要することから、この「熱共振器」では、銅やニッケルでできた発泡素材を基盤とし、熱伝導率を高めるため、グラフェンでコーティング。
これを、さらに、特定の温度の範囲内で固体と液体との間で変化する“相変化物質”のひとつ「オクタデカン」に浸した。
「オクタデカン」が熱を保存し、グラフェンが熱伝導を速めることで、熱から電流を生成できるというわけだ。
プロトタイプによる実験では、昼夜の摂氏10度の気温差で、小型のセンサーや通信システムの電力をまかなうことのできる1.3ミリワットの電力を生成することに成功したという。
・新たな再生可能エネルギーとしての活用に期待
「熱共振器」が現時点で生成できる電力はまだ小さいものの、大気の温度変化から発電する仕組みであるため、日当たりや天候、風の短期的な変化に影響を受けないのが利点だ。
太陽光エネルギーや風力エネルギーを代替もしくは補完する、新たな再生可能エネルギーの発電手法として、注目されている。(文 松岡由希子)
MIT News