SHERLOCKは肉眼で結果の見られるペーパー検査キットで、近年、遺伝子治療の分野で最もホットなCRISPRの技術を遺伝子編集以外の用途で活用したものだ。
今回は、改良により実用化に一歩近づいたSHERLOCKについてご紹介する。
・少量の血液サンプルからガンやウイルス感染を検出
SHERLOCKを使えば少量の血液サンプルから、ガンの発症やウイルス感染、薬剤耐性など多くのことが一目でわかる。
リトマス試験紙のようなペーパーを処理された血液サンプルに浸すと、標的が検出されたかどうかを示す線が現れる。
初期のものでは単一の検査しかできなかったのが今回大幅に改良されて、感度が向上したとともに複数の標的を同時に検査できるようになった。
これにより、ガンのバイオマーカーとして用いられる無細胞DNAや、ジカウイルスおよびデングウイルスの遺伝子などが標的として素早く正確に検出できるとのこと。
・CRISPR関連の酵素を活用してシグナルを放出
この革新的技術のキモは、特定のRNAの結合がプログラミングできる「Cas13」というCRISPR関連の酵素を活用するところ。
Cas13の標的には、ガンを引き起こす突然変異を含む遺伝子配列、特定ウイルスの遺伝子、抗生物質耐性に関する遺伝子などが含まれる。
SHERLOCKの判別表示は、RNAが切断された後に生成されるシグナルに依るものだ。シグナルとなる分子の放出を見ることで、標的遺伝子が存在するかしないかを判別する。
ある特定の状況下においては、ひとたびCas13が標的の遺伝子を見つけて切断すると、近くのRNAを無差別に切断するようになる。研究チームは、「オフターゲット効果」と呼ばれるこの現象を利用し、DNAとRNAの両方に適合するように検査キットを設計した。
・改良により感度は100倍に
今回のSHERLOCKでは、検出シグナルの増幅のためにCRISPR関連の酵素「Cas12a」を追加している。結果としてツールは、以前のものの100倍の感度を実現し、標的の濃度が極めて低い血液サンプルから標的が検出できるよになった。
1回の分析で、最大4つの異なる標的を検出できるとのこと。
こうした改良によりSHERLOCKは実用にぐっと近づいたといえ、近々この検査キットが安価で手軽にガンやウイルスの感染や、薬剤耐性を検査できる世界を切り開く可能性もあるだろう。
参照元:Researchers advance CRISPR-based tool for diagnosing disease/MIT News