システムの用途は実験の効率化で、生物学や化学の実験が複雑化するなか、見た目にもわかりやすく、あらかじめプログラムした動きでいくつもの反応を並行してテストできる同システムは画期的なものだ。
・実験を効率化して研究費用や研究者の労力をカット
現在、生物学の研究で一般的に用いられているシステムでは、チューブやバルブ、ポンプを組み合わせて液体を混ぜ合わせている。実験によっては、器具を100回以上組み合わせる必要があり、セットアップに1週間費やすこともあるようだ。
機械的な作業は、研究者の精神衛生を悪化させるだろうし、今後複雑化する実験では100万回の組み合わせが求められるかもしれない。
そこで、こうした煩雑な手動セットアップが必要なく、規定されたパターンで自動的に液体を動かすシステムが考案された。
同システムは、実験における費用や所要時間、研究者の労力を大幅にカットしくれるだろう。
・水滴の動きやタイミングは自動で計算
システムは、盤上全体での水滴の経路を自動で計算し、操作のタイミングを調整してくれるので、研究者は、実験に必要な条件を事前に指定するだけでよい。
例えば、「試薬Aと試薬Bを規定量で混ぜ合わせ、一定時間反応させた後に試薬Cと混ぜ合わせる」といった条件を指定すると、水滴がどのような経路を辿って流れるかや、盤上のどの地点で混ぜ合わせるか、といったことはいちいち指定しなくても、すべてソフトウェアが計算してくれる。
・水滴の位置を追跡して電極でコントロール
銅線を配置した回路基板の表面は、撥水性素材でできたミクロの球体でコーディングされている。これは、摩擦をできるだけ少なくし、液体によって汚染しないような工夫からだ。
電極が電気を帯びると、球状の水滴が下方に引っ張られてフラットに。これに押された真下の電極がオフになると隣接する電極がオンになり、水滴は電気を帯びた電極に向かって移動する。センサーで水滴の位置や反応を追跡し、動きによって電圧や周波数を自動で調整する仕組み。
同システムは、製薬などの産業利用も考えられ、コスト削減や大規模な実験を可能にすることから、新薬の研究開発スピードの加速にも期待したい。
参照元:Programmable droplets/MIT News