食糧支援の効率化と支援対象者のプライバシーの保護につなげるのが狙いだ。
・ブロックチェーンの仕組みを食糧支援に応用
WFPの食糧支援では、近年、現金や電子マネー、デビットカード、引換券などを配布し、支援対象者がこれらを使って地域の小売店で食糧を購入するケースが増えてきた。
支援対象者が食べたいものを自由に選ぶことができ、地域経済にも寄与できるのが利点だが、金融機関への手数料などがかさむ上、支援対象者の個人情報に対するセキュリティやプライバシーの観点から、第三者機関を介在させることへのリスクも指摘されている。
そこで、WFPでは、開発ベンダーであるドイツの「Datarella」や英国の「Parity」との提携のもと、ブロックチェーンの代表的なプロトコルEthereum(イーサリアム)をベースとした「Building Blocks」を開発。
すべての受給権と取引履歴は、ブロックチェーンによってリアルタイムに記録され、認証される仕組みだ。
・1万人以上のシリア難民に向けた食糧支援に試験導入
2017年5月には、シリア難民1万人以上を対象とする、ヨルダンのアズラック難民キャンプでの食糧支援において、「Building Blocks」を試験的に導入。
地元の金融機関に支払う手数料を98%削減でき、支援対象者の個人情報を国際連合以外の第三者に提供することもなかったという。
WFPでは、2018年以降、さらに多くの地域で「Building Blocks」を導入する計画のほか、デジタルID(身分証明書)の管理やサプライチェーンの可視化など、他の分野への応用可能性についても探っていきたい方針だ。(文 松岡由希子)
Building Blocks/WFP