ただ、これらの水路では水源地に汚染物質が流れ込むなどの課題が山積みになっており、これをIoTで解決しようという試みが進められている。
中国科学院の上海マイクロシステム&IT研究所(SIMIT)の研究チームが中心となって推し進め、5000万人の人々に恩恵を与えているこの大規模IoTプロジェクトについて見ていこう。
・10万個以上130種類以上のセンサーからデータを集める
3本の水路のうちメインとなる中央ルート、丹江口ダムから北京、天津に伸びる1400kmの水路には、10万個以上のセンサーが取り付けられ、水質や水流の速度、設備の破損や人・動物の侵入などについての情報を常に収集している。
2012年から始まったこのIoTプロジェクトは、水の流れを最適化し、人々に安全な飲料水を提供している。
また、地震の多い地域などでも設備の損傷を監視してシステムの不具合を未然に防ぎ、システムに悪影響を与える侵入者も検知して対応する。
これら水、インフラ、セキュリティに関する多様な課題に対処するために、130種類以上のセンサーやカメラを設置。たとえば運河に隣接する地中に設置されたセンサーからは、インフラのストレス、ひずみ、振動、変調、土圧、水漏れなどを測定しているとのこと。
・多様な状況に応じたデータ送信手段
収集されたデータは、それぞれの特性や環境に応じて、光ファイバー、イーサネット、2G、3G、4G、Wi-Fi、Zigbeeなど、あらゆる規格のなかから利用可能なものを使用して送信されるようだ。
通信が不安定な環境下においては、研究チームの開発したIoTゲートウェイが活躍し、データ送信が成功するまで、いくつものネットワークで通信を試みる。
データは運河沿いにある47の地域中継サーバーのうち最も近いものに送信され、そこから5つの主要都市にある管理サーバーへ、最終的には北京のメインサーバーに送られ分析や判断に用いられる。
通常時にはデータは目的や状況に合わせて、5分、30分、1日などの間隔で定期的に送信され、地震や化学物質の流出などの特別なイベントが発生した場合には、データは直ちに送信される仕組みだ。
SIMITの研究チームによる同プロジェクトは、インフラを監視するIoTプロジェクトの好事例で、ここでの技術やナレッジは、別の大規模インフラから高層ビルのガラスパネルといった設備の監視まで、さまざまな規模のものに役立てられるだろう。
参照元:100,000 IoT Sensors Monitor a 1,400-Kilometer Canal in China/IEEE SPECTRUM