彼らが手がけるのは、ライブコマースアプリ「PinQul(ピンクル)」。デザイナーは、人気インスタグラマーなど、SNSで活躍するインフルエンサーたち。彼女たちが紹介する最新流行のアイテムを、ライブを見ながらその場で購入できるという、新感覚のファッションアプリだ。昨年11月に立ち上げたオリジナルブランド、「P.Q. by PinQul」も大好評。わずか1か月で、数百万円の売り上げを達成している。
若い世代の感覚を的確に捉えた戦略が、絶好調の同社。成功の秘訣は、どこにあるのだろうか。Chief Creative Officer の豊田 恵二郎(とよだ けいじろう)氏に、話を聞いた。
・インフルエンサー一人ひとりの“好き”をブランド化
Q1:まずはさかのぼって、「PinQul」アプリ立ち上げのきっかけから、お聞かせください。
そもそもFlattの起業は、弊社代表である井手の、「日本を変えたい」という思いからきています。事業案はいくつかあったのですが、井手ともう一人のメンバー(現在は北京大学に留学中)が中国に行った際、その先進性とライブ配信サービスの流行に衝撃を受け、ライブコマースに決定したという経緯があります。
リサーチの結果、若い女性向けのアパレル商材を取り扱うことになりました。そこから3か月ほどのデザイン/開発期間を経て、昨年9月に、「PinQul」が完成した次第です。
Q2:オリジナルブランド「P.Q.」について、お伺いします。従来のアパレルブランドとの決定的な違い(差別化ポイント)は、どこにあるのでしょうか。
「P.Q.」は、誰か個人のブランドというわけではありません。例えて言うなら、ブランドの集合体のようなものです。インフルエンサー一人ひとりが、「自分の『好き』をカタチにする」をコンセプトに、思い思いに服やアクセサリーをデザインし、それを「P.Q.」ブランドで商品化しています。
差別化のポイントは、(中略)「一切うそをついていない」ところです。ライブはリッチな情報量を伝えられる反面、うそが許されません。リッチな情報量とインタラクティブ性を持つがゆえに、すぐバレてしまうからです。
ライブコマース販売を前提にしている「P.Q.」では、ODMメーカーのデザイナーと複数にわたって打ち合わせをし、サンプル品への修正も繰り返しています。そうした丁寧な作業を経て、インフルエンサーの好きをカタチにした商品が完成するのです。商品にストーリーがあり、それをライブコマースで最大限伝えられる。それこそ、「P.Q.」の強みと言えるでしょう。
・次のステップへ向けて準備中!?
Q3:ブランドの購入層は、どんな人たちなのでしょうか。また、購入者からの反響はいかがなものでしょうか。
想定ターゲットどおり、やはり若い女性が多いです。メインは、10代後半〜20代中盤といった感じですね。インスタグラムを使いこなしている世代であるとも言えます。
また、これはライブコマースならではですが、お客さま一人あたりの単価とCVRが、異様に高いのが特長です。約1万2000円の商品が、30分で43着売れることもあります。若い女性がターゲットでありながら、高い単価を実現しているのです。
反響も、うれしいものが多いですね。買ってくれたユーザーさんがハッシュタグ付きで投稿してくれたり、クリスマスのディズニーランドへ、買った服を着て行ってくれたりしています。
Q4:こうしたオリジナルブランドは、これからも立ち上げていくのでしょうか。サービス全体の今後の展開と併せて、教えてください。
ライブコマース×プライベートブランドは、これからも「P.Q.」の商品製作同様、継続していきたいと思っています。しかし、それ単体では、日本を動かすほどの大きなビジネスにはなり得ません。僕らにとって、「P.Q.」は着地点ではなく、次のステップへの布石です。
以後の戦略は、ここでお話しすることはできませんが、いずれまた、面白いご報告ができるかと思います。
気になる形で終わった取材。豊田氏の言う次のステップとは、どんなものなのだろうか。今後の動きに注目したい。(取材・文 乾 雅美)
PinQul