そうした現場の課題を解決するために誕生したのが、「kaidoku(カイドク)」。多くの資料から、必要な関連情報を素早く特定し、従来のコンピューターデータベースでは分類・分析できなかった非構造化データを扱うことができる、画期的な文書検索システムだ。その圧倒的な抽出力とスピードは、従来業務に大きな変革をもたらすと、目されている。
開発元は、人工知能の研究開発と関連ソリューションを手がけるCogent Labs(コージェントラボ)。リサーチサイエンティストのマックス・フレンゼル博士に、話を聞いた。
・どんな文字データも検索できる!
Q1:まずは、このようなシステムを開発するに至ったきっかけから、お聞かせください。
弊社では、AIの研究開発を行っているため、文章の理解は主要研究の1つでもあります。「Kaidoku」は、その文章理解の研究から生まれた、どんな文字データも検索できる画期的なシステムです。
弊社には、手書き文字を認識してテキストデータにする「Tegaki」というサービスがありますが、「Kaidoku」は、その手書きデータの意味を理解するために利用できるので、商品ラインナップとしても強力です。
Q2:システム構築にあたって最も苦労したのは、どんなところでしょうか。
自然言語に関するさまざまな課題を、AIで処理できるとする論文は、数多く存在します。しかし、その多くは、非常に人工的なデータを使用していたり、単純化されたケースであったりします。今回のような(現実に発生するノイズ入りの多様なデータを処理する)AIを開発するためには、従来のさまざまなアプローチを組み合わせるだけではなく、弊社独自の手法を、作り出す必要がありました。
また、(中略)常に取り組むべき課題として、トレーニングに適したデータの入手があります。幸いなことに私たちは、お客さまやパートナーとよい関係性を築いているため、多彩なリソースが手に入っています。
・業務にかかる時間の短縮とコスト削減を実現
Q3:「Kaidoku」は、ビジネスのどのような場面で活躍するのでしょうか。また、本システム導入によって、ユーザーはどのようなメリットを得られるのでしょうか。
弊社の基本方針の1つに、“人を人らしくする“というミッションがあります。「Kaidoku」を使えば、煩雑な業務にかかる時間を短縮します。さらに、完全に自動化することで、業務効率を高め、コストを削減します。
(医療現場や法曹界などに従事する)専門家は、多くの煩雑な仕事を「Kaidoku」に任せることで、お客さまを深く理解できるようになります。リレーションを構築するなど、付加価値を生み出すための本来業務に、集中することもできます。
Q4:今後の展開について、教えてください。
「Kaidoku」は、さまざまな未知のインサイトを突き止める上で便利ですが、効果的に活用するためには、一定のデータ分析知識のあるユーザーが必要です。将来的には、そのインサイトを見つけ、ユーザーに通知できるようになる予定です。加えて、弊社の他の商品との連携もめざしています。例えば、「Kaidoku」で金融ニュースとアナリストのセンチメントを理解し、金融市場をより高い精度で予測できるような仕組みです。
弊社では、AIは、知覚、理解、および推論の順に、開発が進んでいくと捉えています。(中略)「Kaidoku」を次の段階に進めることで、推論のAI開発に、より一層近づけると、そう考えております。
進化ばかりが取沙汰される人工知能。しかし、人間による研究がなければ、それはあり得ない。改善すべき課題があって、はじめて機能するものだ。「Kaidoku」は、Cogent Labs社の努力の結集。多くの現場で活用されることを願いたい。(取材・文 乾 雅美)
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