大阪にオープンした無人型宿泊施設「Commune(コミューン)」では、ほぼすべての業務をAIが担っている。チェックインは、タブレットから自動で。フロントスタッフが常駐しないため、宿泊客とのコミュニケーションは、24時間チャットで行う。部屋に入れば、音声端末が設備の利用をサポート。レストランの予約やタクシーの配車も、専用デバイスから気軽に依頼できる。
運営元は、2015年設立のVSbias。代表取締役 の留田 紫雲 (とめだ しゅん)氏が、取材に応じてくれた。
・目的は宿泊産業の労働環境改革
Q1:まずは、「Commune」をオープンするに至ったきっかけと経緯について、お聞かせください。
オープンの背景には、宿泊産業が抱えている劣悪な労働環境に改革を起こしたい、という思いがありました。
オリンピック開催などの影響もあり、訪日外国人数や、その受け皿となる宿泊施設は増加を続けています。しかし、生産年齢人口は下がってきているため、宿泊施設で働く人材の採用が、どんどん困難になっています。そのため、少ない人数で多くの仕事をこなさねばならず、教育不足、残業時間の増加、有給未消化といった労働環境の悪化も進んでいます。
こうした状況から、AIなどのテクノロジーを活用することで、宿泊施設のスタッフが「人にしかできない仕事に集中」できることをめざした「Commune」を立ち上げました。
Q2:「Commune」の魅力とは、何でしょうか。この施設ならではの特長と併せて、教えてください。
「Commune」の魅力は何と言っても、大人数で安価に長く宿泊できるところです。
ビジネスホテルなどとは異なり、部屋の広さはすべて25平米以上、4人収容のため、家族や友人との旅行でも、全員が同じ部屋で過ごすことができます。無人運営によるコスト削減で、1人あたりの宿泊価格は2000円〜4000円と、ゲストハウスと同程度の価格を提供しています。さらに、従来の施設とは違って、すべての客室に、キッチンや洗濯機を取り付けています。中長期で滞在する宿泊者にも最適です。
・利用者からも高評価
Q3:オープン以来、稼働率80パーセントを超えるなど、好調のようですが、実際に宿泊されたお客さまからの反響は、いかがなものでしょうか。
フロントでの対面接客を行っていないにも関わらず、お客さまからは「快適に過ごすことができた」「非常に面白い取り組みだと思う」「音声アシスタントのおかげで行き先を調べなくて済んだ」など、高い評価をいただいております。
一方、「チェックイン方法がわかりづらい」「エラーが起きた」といった課題もございますので、そこは今後改善していくつもりです。
Q4:今後の展開について、教えてください。
今後も大阪市を中心に、同様の施設のオープンを、複数控えております。また、将来的に旅館業が改正されるようでしたら、都市部だけではなく、人材採用や教育がより困難な地方観光地にも、進出していきたいと思っております。
人口知能の活用が当たり前の時代。宿泊する側も、抵抗なく利用する人が多いようだ。むしろ、人がいない分、気楽に滞在できるのかもしれない。東京オリンピック開催時までに、こうした施設は増えていくだろう。「Commune」にはパイオニアとして、この流れを牽引してもらいたいと思う。(取材・文 乾 雅美)
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