コスメの口コミアプリ「LIPS」がメインターゲットとするのも、まさにこうした若い女性層だ。同アプリは、2017年1月にリリースされてから、SNSのようなUIと使い勝手の良さを武器に、順調にユーザー数を拡大している。
LIPSを開発したAppBrewは、女性が少ない東大発のスタートアップ。また創業メンバーの3人のうち2人は中学高校も男子校だったという。彼らはどういうきっかけでLIPSを開発し、どのように女性ユーザーに支持されるサービスに成長させていったのか。インタビューで詳しい話を聞くことができた。
Q1. LIPSの開発をスタートさせたきっかけを教えてください。
LIPSの開発をはじめる一年前から会社自体は動いており、その間も色々なサービスを作って試していました。ジャンルは絞らず「沢山の人に使われ、必要とされるサービスを作りたい」と思い、5つ6つほどWebサービスを開発しました。そんな中、皆で新しいアイデアを出し合う中で出てきたのがLIPSです。
アイディアを考える際に、IT業界は男性が多いので女性がメインターゲットとなる領域なら競合が少ないのではと考えました。そこで化粧品や美容まわりで何かサービスを作れないかと思い、TwitterやInstagramの「美容垢」や「コスメ垢」(美容アカウント・コスメアカウント)を大量にフォローしました。すると、それらのアカウントがSNS上でコミュニティを成し、熱狂的に情報を共有していること、またごく一部の人しかそれらのアカウントにそもそも辿り着いていないことが浮かび上がってきて、ソーシャルな形でコスメの情報を共有できるアプリにニーズがあるのではないかと考えました。
Q2. なぜSNSのようなUIにしたのでしょうか。
自分たちのようなミレニアル世代は、物心つく前からインターネットに触れており、SNSで友達や気の合う人と情報交換することが当たり前になっています。それらの情報に比べると、雑誌やテレビの情報は「つくられた感」があるし、自分専用ではなく「世間一般向け」なので、SNSの情報の方が実際の買い物のときに役立つと感じている人が多いのではないかと思います。
同じ女性でも、ダイエットにしか興味がない女性、特定のコスメブランドにしか興味がない女性など、好みは様々です。だからこそ、自分と好みが似ている人が商品をオススメしていると、ワクワクする。そのこと自体が商品の付加価値となる。そういった背景を考慮するとSNSのようなUIにすることは必然的でした。
Q3. サービスをグロースさせる上で苦労したことはありますか?
LIPSのような複雑なモバイルアプリを本格的に作ったことのあるメンバーがおらず、開発がまず大変でした。アプリを作りながら新しい言語を勉強したので、正直最近までクラッシュ率もかなり高かったと思います。
また、アプリが出来上がってからも、女性の知り合いが少なかったためフィードバックを集めるのが大変でした。在学中に会社を立ち上げたのですが、東大は女性がかなり少なく、また当時の会社メンバーの3人中2人は中学高校も男子校の出身でした。最終的には友人づてやネット上の募集でなんとかテストユーザーをかき集めました。
ユーザーが集まってからも、アプリを見るだけのユーザーばかりにならないように気をつけました。いいねボタンを目立たせたり、フォローボタンを複数画面に設置したりすることで、リアクションが増え、それがうまく投稿のモチベーションに繋がったのではないかと思います。
Q4. 今後の展開やマネタイズの計画について、考えていることがあれば教えてください。
今後はさらに多くの方にLIPSでのコスメ探しを楽しんでもらうために、表示する情報のパーソナライズと多様化を行っていきます。また、さらに簡単に自分と趣味や属性が近いユーザーと出会い、気軽に情報交換をできるような改善を行っていきます。
LIPS公式ユーザー企画も進めております。LIPS内で影響力のあるユーザーの方や、他媒体で既に影響力を持っているインフルエンサーの方を「LIPS公式ユーザー」として認定し、口コミを定期的に投稿していただく予定です。
最後にマネタイズですが、現在法人様向けメニューを準備中で、既に複数の企業と話を進めております。具体的には、LIPS上での情報発信を通してブランドのファンを作っていけるサービスを開発中です。
2017年1月のリリースから9ヶ月で30万ダウンロードを突破し、2017年10月21日にはAppStore総合無料ランキング1位を獲得したLIPS。躍進の裏には、若い年代のネット感覚をうまく捉えたサービス設計があった。5月には総額7600万円の第三者割当増資を実施したAppBrewから、しばらくは目が離せない。
(取材・文 shimamura)
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