一方、せっかく導入したシステムが、宝の持ち腐れになってしまうケースも少なくない。一番の問題点は、運用面だろう。どんなにいいサービスでも、当事者たる社員が使いこなせなければ意味がない。ここを突き詰めていけば、さらに需要は拡大するのではないだろうか。
バーチャルオペレーター「Karakuri(カラクリ)」は、誰でも簡単に活用できることを目的に、誕生したシステムだ。カスタマーサポートの現場で使えるAIを搭載した本サービス。特殊なスキルや知識は不要。実務経験があれば、即利用可能だ。チームの一員として、ともに成長していく楽しみもある。
開発元は、2016年創業のカラクリ。取締役 CMO 兼 CCO(Chief Customer Officer)の鈴木 奨平(すずき しょうへい)氏に、話を聞いた。
・ネットショッピングのスキルで十分使いこなせるAI
Q1:まずは、このようなサービスを提供するに至った理由から、お聞かせください。
カスタマーサポート/カスタマーサクセス(以下、CS)領域において、人手不足は深刻な問題です。そのため、顧客のサポートが充分でなく、顧客の不満ばかりか、サポートをする側のストレスも生むという、ネガティブなサイクルに陥りやすくなっています。
問題を解決したくても、コストや運用面など、さまざまな障壁が存在します。さらに、継続課金サービスの増加に伴い、CSの重要性は、年々高まっているのです。そこで、こうした課題を解決するべく、CSの現場で使えるAI「Karakuri」をリリースしました。
Q2:最近は業務の効率化を図るため、特にカスタマーサポートの分野で、AIのサービスを取り入れているようです。それら従来のサービスとの決定的な違いは、どこにあるのでしょうか。
「CSの現場で使える」ということに、こだわっています。今のAI技術では、顧客対応分野においても、AIが得意とすることと、苦手とすることがあるため、自社のビジネスモデルや業務オペレーションに適合したAIを実装しないと、ワークしません。加えて、運用が大変なことを理解せず、導入後放置される、追加コストがかかるといったケースも、発生しています。
よく「非エンジニアでも利用できるAIです」と、うたっているものがありますが、実際は高度なスキルを必要とすることがほとんどです。弊社では高度なAIを、「ネットショッピングレベルのスキル」で、使えるようにしました。
・まずはCS現場の課題にフォーカスしたサービスを
Q3:開発に当たって最も苦労したのは、どのようなところでしょうか。
AIエンジンそのものと、現場で使えるようにするための管理画面のUIです。AIエンジンについては、従来の自然言語処理の流れではなく、深層学習をベースとしています。なるべく少ないデータでも、精度が上がるよう、チューニングするのが大変でした。
また、高度なAIを使いながら、現場で簡単に利用できるUIにするため、実装すべき機能、あえて実装しない機能を取捨選択したり、管理画面をデザインすることに苦労しました。どちらもまだまだこれからなので、ユーザーの声と向き合いながら、日々レベルアップさせていければ、と思っています。
Q4:今後の展開について、教えてください。
短期的には、CS現場の課題にフォーカスして、機能実装や他社連携(CRMなど)を進めていきます。開発・導入して終わりではなく、より生産性に寄与するサービスとして、随時ブラッシュアップしていく所存です。また、バーチャルオペレーター(チャットボット)だけではなく、CS現場の改善につながるサービスや機能を、ローンチしていく予定です。
中長期的には、CS領域以外でも、AIを活用したさまざまなビジネス展開を、行っていくつもりです。
「自分たちのナレッジが整理された」「チームのメンバーとして、愛着が出てきた」など、導入先企業からも高い評価を得ている「Karakuri」。サービスの浸透に、期待したい。(取材・文 乾 雅美)
Karakuri