こうしたビットコインのマイニング機器の進歩及びシステムの維持に多大な貢献をしてきたBitMainが、AIチップとこれを搭載する製品群をリリースした。
11月8日に北京で開催されたAIWORLDにて、BitMainが発表した「Sophon BM1680」では、同社がビットコインの分野で培った技術をAIチップに適用している。
これを搭載したボード「SC1」は、深層学習アプリケーションのアクセラレータとして設計され、サーバの「SS1」は、動画及び画像の分析で優れた性能を発揮する。Googleの深層学習チップ「TPU」を意識したというAIチップ、BM1680の特徴を見ていこう。
・GoogleのTPUをモデルに設計
現在ビットコインのマイニングに使われている機器の約70%は、BitMainによるASIC(特定用途向けの半導体)「Antminer S9」を搭載するもので、ビットコイン関連市場での同社の存在は大きなものだ。
しかし、政府による仮想通貨への規制から、中国のマイニングファームは次々撤退。また、電気代が中国よりも高く不利だとされていた日本からも、ビットコインの価格高騰を機にマイニング事業への参入を示す企業が続々と名乗りを上げている。
こうした状況下においては、BitMainの地位も決して安泰とはいえず、AI事業への本格参入は同社の生き残り戦略だ。同社はAIチップ開発開始の2015年当初からGoogleのTPUをモデルとしており、今回発表のBM1680に関しても、そのアーキテクチャがTPUと似たものになっている。
・2テラFlopsの演算性能を実現
深層学習では大きく分けて、データセットから学習モデルを構築する「トレーニング」と、学習モデルを使ってタスクを実行する「推論」の2つの過程があるが、BM1680ではどちらにおいも高いパフォーマンスを発揮できるようだ。ちなみにGoogleのTPUでも今年発表された第二世代から「トレーニング」「推論」の両方に対応している。
BM1680は32ビットの浮動小数点演算を実行し、1秒間に2兆回の演算(2テラFlops)が可能だ。ちなみにGoogleの第二世代TPUでは45テラFlops、4個搭載のボードで180テラFlopsの演算性能を誇る。
BitMainは、すでにBaiduやAlibaba、Tencentといった中国IT大手と交渉に入っており、もし現在主流となっているGPUベースの深層学習向け製品に比べて同社の製品活用にメリットがあれば、AIチップ市場の勢力図に加わる可能性も十分あるだろう。
参照元:Bitcoin’s Biggest Tech Player to Release AI Chips and Computers/IEEE Spectrum