健康寿命の延長やセルフケアの促進が各国で取り組まれており、そこで重要となるのが電子健康記録(EHR:Electronic Health Record)や個人健康記録(PHR:Personal Health Record)の有効活用になる。
一方で、閲覧・活用可能なEHR・PHRを扱うプラットフォームの運用は、セキュリティ面とコスト面で課題を抱えている。
これを解決すると期待されるのが、堅牢性に優れ、中央集権型機関が不要なブロックチェーンで、日本においても国を挙げて導入の検討なされてきた。
このほど、これをいちはやく実現し、サービス開始を発表したグローバル・プラットフォーマーが表れた。
健康記録プラットフォーム「MintHealth」は、ブロックチェーン技術により、ユーザーがスマホアプリやWebアプリを通じてリアルタイムで健康記録にアクセスすることを可能にし、独自のデジタル通貨も発行する。今回は、MintHealthの革新性に迫る。
・ユーザーの能動的な健康行動を促す
MintHealthの目標は、慢性疾患の発症および合併症のリスクを最小限に抑えるように、患者をエンパワーメントすることだ。
心不全、糖尿病、高血圧症やその他の慢性疾患に罹患するのを未然に防ぐべく、ユーザーが能動的に自身の健康データを管理するように設計されている。
ユーザーの能動的な健康行動を促すのにとても有効なのがインセンティブの付与だ。MintHealthは、Vidamints(VIDA)というデジタル通貨を発行して、健康行動の完遂に対してVIDAトークンが付与される仕組みになっている。
VIDAトークンは、保険料、医療サービスの受益、ヘルスケア製品の購入といった用途で利用でき、スマートコントラクトによる健康ゴールド免許の実現といったところだ。
・健康データや行動データのシームレスな移動が可能
健康記録プラットフォームはブロックチェーン上に構築されているため、ユーザーは自分のアカウントに一意のグローバル識別子を割り当てられて、いつでもアプリを通じて自分の記録を見にいくことができる。
また、健康データや行動データは、ユーザーが許可すれば、これを有効活用してサービスを提供する事業者からもアクセスできる。
ブロックチェーンは、ピア・ツー・ピアネットワークを介したすべての取り引きが分散化された台帳であり、ユーザーや事業者は健康データやトークンなどが中央集権的機関の認証なしで取り引きできる。
認証主体がユーザーになることで、データが流動的に活用できるようになる。取り引きに関してもすべてが記録されるため、透明性の高いシステムが構築可能だ。
・データの蓄積による疾患に関わる因子特定にも期待
MintHealthが中心に据えているのは、個人のエンパワーメントだが、そこでのエコシステムはさまざまな事業者へのサービス提供機会をもたらし、優良なサービスを育てる土壌となる。
将来的には、データの蓄積によって、疾患や健康に関わる行動因子を特定し、健康状態の予測などにも役立つと考えられ、同プラットフォームをひとつのロールモデルと捉えて動向をウォッチしたい。
参照:MintHealth: Empowering Patients to Take Control of their Health and Data via Blockchain Technology/PR Newswire