カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究チームが、既存の建物に塗るだけで耐震性を格段にアップさせられるコンクリート「EDCC」を開発した。
マグニチュード9.0にも耐える強度を確保できるとのことで、現地の小学校の建物の補強工事に使われる予定だ。
・鉄鋼のような柔軟性
EDCCは「Eco-friendly ductile cementitious composite」の略。フライアッシュと呼ばれる石炭灰の一部にポリマー系ファイバー、工業用添加剤などを加えて作られている。
実験ではEDCCが10ミリの厚さになるように壁にスプレーし、東北大震災と同じマグニチュード9.0~9.1の揺れを加えた。
その結果、従来のコンクリートブロックの壁の60~65%が崩壊したのに対し、EDCCを吹き付けた壁はたわみながらも壊れることはなかった。研究チームによると、EDCCは鉄鋼のような柔軟性があるのだという。
・環境への負荷を抑制
フライアッシュは工業過程で副産される廃棄物で、EDCCでは従来のセメントの70%をフライアッシュに置き換える。つまり、製造過程で多くの二酸化炭素を排出するセメントの使用量を抑制することができ、環境に優しいのも売りだ。
EDCCはまずはバンクーバー市内の小学校の建物の補強工事に使用される。その後は他の学校、そして先住民の住居やパイプライン、舗装道路、海洋プラットフォームなどにも広げていく見込みだ。
日本では建築物の耐震化工事があちこちで行われているが、コストや手間などの観点からEDCCを検討する余地は十分ありそうだ。
University of British Columbia