そんななか、誰もが持っているスマホの、高度な処理能力やカメラ、セキュリティ機能に目を付けたのが、イリノイ大学やワシントン大学の研究者グループだ。
彼らは医療を促進したいとの想いから、安価で迅速かつ容易にポイント・オブ・ケア診断がおこなえる検査キットを開発した。この検査キットが普及すれば、医療現場での不要な労力を減少させ、本当に必要な人への治療の提供につながるだろう。感染症検査キットについて説明していく。
・1滴の体液から複数の感染症を診断
研究グループが開発した、ポイント・オブ・ケア診断キットは、公衆衛生においても重要な役割を果たし、感染症の大規模流行を防止に寄与するだろう。また、現場で手軽におこなえる診療は、大掛かりな診療機器のない地域でも役立つものだ。
検査は、スマホホルダ内に収納された診断ツールと、アプリを使用しておこなわれる。WiFiやBluetoothを通してスマホと通信することで、スマホの機能を利用。クレジットカードのようなカートリッジに埋め込まれたチップ上のリアルタイムイメージを解析して、ウイルス感染の有無などの検査を実施する。
ホルダについては3Dプリントにて、簡単で安価に製作できる。また、1滴の体液を用いてウイルス感染の有無など複数の検査を同時におこなうことができるようだ。
・将来的にはインフルエンザの診断も
研究グループは最近、診断キットの性能を示す2つの研究を発表している。1つの研究結果からは、1頭のウマ検体サンプルから4つの呼吸器病原体を検出する能力が示され、検査時間は30分間以内だった。検出できる最小値(検出限界)については、標準的な実験装置と同等とのこと。
もう1つの研究結果からは、ジカウイルス、デング1型および3型、チクングニヤウイルスに関して、ヒト全血のサンプル検査と同等の性能が示された。ポータブルで安価な検査キットがこれほどの性能を示すのは驚くべきことで、検査キットはすでに実用性があるものだ。
だが、ポイント・オブ・ケア診断での、非常に低いウイルス血症検出の必要性を満たすためには、検出限界をさらに改善する必要があり、今後の研究に期待がかかる。さらには、インフルエンザ用の診断カートリッジなど、その他のさまざまな感染症の診断も将来的には可能になるだろう。
参照元:Smartphone-powered tool offers point-of-care infection diagnoses/mobihealthnews