この難題に挑んだのが、2015年設立の1→10Robotics(ワン・トゥー・テン・ロボティクス)だ。同社が開発したのは、“空気を読む”会話エンジン「PECO (ペコ)」。ロボットはもちろん、チャットボットやスピーカーといった会話デバイス、アニメのキャラクターなど、さまざまなものに対応可能だという。
取材に応じてくれたのは、代表取締役社長の長井 健一(ながい けんいち)氏。気になるその中身について、話を聞いた。
・ユーザーの感覚情報を文脈として捉えながら会話
Q1:「PECO」とは、どんな会話エンジンなのでしょうか。
弊社では、ロボット、バーチャルアシスタント、チャットボット、コネクテッドカーや スマートデバイスなどで、これまでに多くのロボット体験・会話体験を作ってきました。
会話エンジン「PECO」は、そうした知見を元に設計からやり直し、パッケージ化してリリースしましたものです。「PECO」を搭載すると、センシング機能やAIと連携し、さまざまなデバイスと空気を読んだ会話ができるようになります。
Q2:「空気を読む会話エンジン」とのことですが、それはどのような技術によって実現したのでしょうか。
これまでの会話エンジンは、テキストを中心としたやりとりがベースですが、現時点ではそこで扱える情報量も情報密度にも、限界があると考えています。
人工知能の次の発展には、マルチモーダル・インタフェースと呼ばれる、複数の感覚を横断し統合する知能が必要と言われています。「PECO」はそれを見据えた設計をしており、視覚・聴覚・触覚・感情値などの感覚情報、ユーザー属性や記憶、環境情報などを文脈として捉え、アニメーションを用いて、表情豊かに「空気を読む」会話をします。
・さまざまなシーンでの活用が可能
Q3:「PECO」を導入することで、ユーザーはどんなメリットを得るのでしょうか。想定される活用事例と併せて教えてください。
「PECO」は、あらゆるものに搭載できます。例えば、ウェブサイトでは、サイト上のチャットボットとして、掲載情報に合わせた案内やレコメンドなどを行いますし、サイネージなら、ユーザーの性別・年齢・距離などに応じて、日時や天気・ニュースを活用した案内が可能です。
ユーザーごとに登録情報、趣味嗜好、思い出やライフログ(誰が・いつ・何を)を記録して会話するので、ロボットやスマートデバイスなど、さまざまなプロダクトで活用できます。会話体験や、キャラクターを使用したチャットボットによる広告キャンペーンの展開も、考えられます。
Q4:今後の展開について、教えてください。
「PECO」は、広告キャンペーンのようなエンタメ性の高い案件から、ECサイトのように機能性を求められる案件、デバイスをはじめとするハードと連携したプロダクトなど、幅広い分野で活用できるエンジンです。(中略)(グループ企業として親会社と連携しながら)今後も引き続き、ロボットの未来を切り拓いていけるよう、努めて参ります。
1→10Roboticsのホームページでは、案内役のモッチを通して、会話エンジンの体験を提供している。聞きたいことを入力してみよう。その精度の高さに、きっと驚くはず。(取材・文 乾 雅美)
PECO/1→10Roboticsコーポレートサイト