領土外に専用サーバーを保有し、バックアップをとっておくことで、国が扱うあらゆるデータ、情報システムの破壊や紛失、盗難に備えるのが狙いだ。
・国のデータや情報システムを領土外の“大使館”でバックアップ
1991年にソビエト連邦より独立を回復したエストニアは、1997年から情報技術を行政に活用する“電子政府”化に取り組むなど、デジタル社会の先進国として知られ、現在、公共サービスの99%が電子化されている。
その一方で、2007年、ロシアからのサイバー攻撃により、政府や銀行、マスコミといったエストニア国内のウェブサイトが同時にオフライン状態となり、甚大な影響を受けた苦い経験から、サイバーセキュリティの重要性も強く認識していたという。
そこで、エストニア政府は、公共サービスの機能性とデータの連続性を担保するべく、国外にデータセンターを保有する方針を打ち出し、複数の候補国と協議を重ねた結果、ルクセンブルグ東部のベッツドルフに“データ大使館”を開設することを決定。
2017年6月には、エストニアのユリ・ラタ首相とルクセンブルグのグザヴィエ・ベッテル首相が、エストニアによる“データ大使館”の開設についての合意書に署名した。
2018年明けにも開設される“データ大使館”には、エストニア国民の身分証明書をはじめ、税金や年金にまつわる情報、不動産や法人の登記簿、エストニアの法令や統計データなど、様々な情報が、バックアップとして保存される計画だ。
・“データ大使館”が世界に広がる?!
エストニアによる世界初の“データ大使館”の試みは、公共サービスの分野で電子化をすすめる他の国々にとっても参考となる事例といえるだろう。(文 松岡由希子)
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