このほど、コロンビア大学の研究グループは、ソフトな人工筋肉として機能し得る素材を開発し、生物学的システムを模したロボットの実現に向けて、大きな一歩を踏み出した。
新たに開発された素材は、押したり引っ張ったり曲げたり捻ったりできて、人間の筋肉の約3倍の強度を持つ。このようなソフトな素材が用いられたロボットは、自然な動きができるため、医療や介護など、ロボットが人間と接触して仕事をする領域での活用が期待されている。また、製造業での細かい作業、柔らかいものを取り扱う作業も得意分野だ。
・外部圧縮機なしでロボットを動かす
これまで、ロボットを動かすのに十分な動力を備えたソフトな素材は見つかっていなかった。
空気圧や水圧によるソフトな駆動装置は存在するが、これらには、伸縮部そのものの他に圧縮機を外部に持つ必要があり、ロボットを小型化するときなどに支障をきたす。
研究グループが開発した人工筋肉は、外部圧縮機を必要せず、それ自体に膨張能力を備えた活性組織だ。弾性と極端な体積変化といった特性を兼ね備えていながら、製造が容易で低コスト。
環境にも安全な素材で、シリコーンゴムと微細な気泡に織り込まれたエタノールからできている。
・低電力で動作し自重の1000倍のパワーを発揮
従来の人工筋肉で必要とされていた高電圧機器も必要ない。新素材でできた人工筋肉は、埋め込み式のワイヤーに8Vからの電流を流すことで動作し、電気的に80℃まで加熱すれば900%まで膨張させることが可能だ。
1グラムあたりの膨張率は筋肉の約15倍で、自重の約1000倍のものが持ち上げられる。
形状も自由度が高く、求められる形状に3Dプリントして、ワーム型ロボットや柔軟なものを掴むためのアームなど、さまざまなタイプのロボットへの実装が可能だ。
今後は、埋め込みワイヤーを別の導電性材料に置き換えることで、人工筋肉の反応時間を加速するなどの発展を見込んでいる。電気的な制御で、人工筋肉がスピーディに反応するようになれば、実用性が格段に高まると考えられ、生物に近い動きをするロボットがあちこちで活躍するようになるだろう。
参照:One Step Closer to Lifelike Robots/Columbia Engineering