同プログラムは、近年におけるECの進化や人口減少など物流業界が抱えるさまざまな環境変化を踏まえ、両社が「これからの時代に応じた郵便・物流を提供し、社会をより豊かに」の実現を目的として実施するもの。
取組テーマに応じて、日本郵便が保有する郵便・物流アセットを開示し、参加スタートアップ企業との共同活用を検討するとのこと。また、そのアイディアの実現可能かを示す検証の場として郵便局やドローン実証実験地などを用意し、早期実用化へ向けた推進も行うとしている。
今回は、同社事業開発推進室主任の福井崇博(ふくい たかひろ)氏に同プログラムの開始に至った背景と今後の展望について、話を伺った。
・なぜオープンイノベーションを採用?
Q1:まずは、「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」の開始に至った経緯をお聞かせください。
日本郵便は、従来より、イノベーション創出に積極的に取り組んできた企業ですが、これからの時代においては、自前主義ではなく、オープンイノベーションによって新たな価値を創出することが必要と考えており、今回のプログラムの実施に至りました。
1871年(明治4年)の日本の郵便事業創設に始まり、その後も、郵便番号制度の導入や、住所を読み取り、自動的に仕分けて集積する「郵便区分機」の導入など、これまでも、その時代において革新的な技術や仕組みを導入し、お客さまの利便性の向上や、ユニバーサルサービスを提供し続けるための効率化に取組んできました。 しかし、近年、ECの進化や生活環境の変化、人口減少など、郵便・物流を取り巻く環境は大きく変化し、その変化の速度も増している状況にあります。
そして、同時に、それらに対応する革新的な技術やサービスの多くは、スタートアップ企業から生み出されていると認識しています。 そうした変化の激しい世の中において、これからの時代に応じた郵便・物流サービスを提供し、社会をより豊かにしていくためには、弊社の持つ豊富な経営資源とスタートアップ企業が持つ先進的・革新的な技術やアイディアを組み合わせ、新たな価値を創っていくことが不可欠と考えています。そうした中で、スタートアップ支援で豊富な実績とノウハウを誇るサムライインキュベート様にもご協力をいただきながら、プログラムを推進してきたいと考えています。
Q2:本プログラムは、どういった世界の実現を目指すものでしょうか。
近年におけるECの進化や人口減少など物流業界が抱えるさまざまな環境変化を踏まえ、「これからの時代に応じた郵便・物流サービスを提供し、社会をより豊かに」の実現を目指して実施するものです。
「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」を通して、未来の郵便・物流システムを作り、時代の変化に応じたインフラを提供していきたいと考えています。 また、これからもIT等が発達していくにつれ、より便利な世の中になっていきますが、世代を問わず、あらゆるお客さまに利便性の高いサービスを提供することで、「機会の格差」を失くし、全ての人々の生活をより豊かにしていきたい、と考えています。
・スタートアップ企業と共に事業創出を目指す
Q3:日本郵便と一緒に事業創出することのメリットとは何でしょうか。
日本郵便には、全国約2万4000局の郵便局、約18万本の郵便ポスト、約14万台の郵便事業用車両があり、 1日約3000万か所に郵便物を届けています。また、ユニバーサルサービスを提供し続けるという社会的使命もあります。
当然、すぐにはそうした規模感の取組にはならないと思いますが、共に事業創出に取組んでいただき、順調にいけば、大きな規模感やそれに応じた社会的価値を生み出す取り組みになるということは、スタートアップ企業にとっても大きなメリットだと考えています
Q4:これからプログラムは、どのように展開していくのでしょうか。未来の展望をお聞かせください。
10月4日までの応募期間を経て、書類選考及びプレゼン審査などから、10月中に採択企業を決定予定です。採択企業とは、1月下旬予定のデモデイに向けて、サムライインキュベート様や外部メンターのお力添えもいただきながら、共に企画案を作りこんでいきます。
それにより、事業化や本格導入につながるプロジェクトを生み出すことを目指していきます。また、今回のプログラムは単発企画とは考えておらず、今回の評価反省をしっかり行った上で、どういった手法でイノベーション創出に取り組むのがベストかを考え、今後の展開を行っていきます。
少子高齢化が進む中、人手不足も懸念される昨今。これからの時代に応じた郵便・物流を軽減する新たな仕組みの需要は今後、ますます増えていくだろう。こうしたさまざまな問題を解決するアイディアに期待したい。
(取材・文 釣見 駿)
「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」専用サイト