医療での患者のモニタリングやスマート農業などで、広域でのデータ取得が必要な場合、いまのところLPWA(Low Power Wide Area)各規格の採用が有力候補となるだろう。
しかし、これらにはゲートウェイの設置やカバーエリア内での使用が求められるうえに、コストもかさむことから実用性においての制限が大きい。
このほど、こうした大がかりな通信規格を利用せずとも広域でのデータ取得が可能な技術が開発された。ワシントン大学の研究チームは、安価なセンサーシステムによって、最大2.8kmのデータ伝送を実証した。このセンサーシステムのスペックやその他特徴をみていこう。
・消費電力ほぼゼロで信頼性の高い長距離通信を実現
このセンサーシステムは、消費電力ほぼゼロ(既存の同距離データ通信技術の1/1000程度!)で、信頼性の高い長距離通信が可能だ。障害物のあるさまざまな地形にも対応し、4800ft²(約450m²)の住宅、41室の部屋があるオフィス、1acre(約4050m²)の野菜畑での通信に成功している。
拡散反射した無線信号を、今までにない感度で受信することで長距離通信を実現している。反射された信号を複数の周波数に分散させる技術によって、ノイズに紛れた信号ですら復元できるとのこと。
さまざまなプロダクトに埋め込めることが特徴で、すでに研究チームによって、コンタクトレンズや肌に身に着けるパッチのプロトタイプが製作されているようだ。
・最小限のコストであらゆるデバイスへの接続を可能に
センサーシステムは、無線信号の発信装置と、無線信号に取得情報をデータ化して乗せるセンサー、情報を復元する安価な受信機の3つで構成される。
センサーを無線信号の発信装置の隣に設置すれば、受信機は2.8km離れていても情報を復元できるし、センサーが無線信号の発信装置と受信機の間のどこかに配置する場合は、センサーのデータは最大475mまで送信できるとのこと。
センサー自体は非常に安価で、10~20cent(約10~20円)程度で購入できるだろう。これによって一般消費者が洗剤やペーパータオルなどの日用品を手軽にモニタリングすることも可能となる。
もちろん、24時間に渡って心臓のモニタリングなどの医療の高精度化、土壌の温度や湿度の測定など農業の効率化、騒音や交通量の監視でスマートシティの推進など、IoTが関与するすべての領域に対しての寄与も測り知れない。
センサーシステムは、ワシントン大学研究チームのスピンアウト企業、Jeeva Wirelessによって商品化され、2018年春には販売開始予定となっている。
参照元:UW team shatters long-range communication barrier for devices that consume almost no power-UWNEWS