この発表を深刻な課題として受け止めたのが、ニューヨークを拠点とするデザインスタジオOFFC。研究者とデザイナーが一丸となって、汚染を追跡する玩具「Urban Canary」を開発した。
・デジタル版“炭鉱のカナリア”
「Urban Canary」発想の原点は、炭鉱のカナリア。かつて炭鉱労働者たちは、危険なガスを事前に探知するため、トンネルにカナリアを持ち込んでいた。繊細な鳥は、一酸化炭素のような危険なガスを、真っ先に察知する。鳥の死によって、労働者たちはトンネルから脱出する時期を知ることができたのだ。
本品は、いわばデジタル版“炭鉱のカナリア”。内蔵されたセンサーが空気の質を観察し、その度合いを、ライトの色で通知するようになっている。最初は緑色。これを健全な状態とし、空気が悪くなるほど玩具は病気になり、色が薄くなっていく。赤色になると、危険信号。最悪の汚染を示す。
・蓄積されたデータで汚染マップを作成
これらの情報はすべて、アプリを介して、親のスマートフォンに中継される。子どもが外で遊んでいる間、親たちは汚染量に関する詳細情報を、逐一入手することができるわけだ。蓄積されたデータは、最終的に“汚染マップ”として集約される。親たちはマップを見ながら、子どもを安全に遊ばせるエリアを把握できるようになる。
OFFCの目的は、汚染の状況を家族単位から地域住民にまで広げることにある。「Urban Canary」は、そのためのネットワークの一部。さらに、これが親子で公害について話すきっかけとなり、大気汚染にもっと関心を持ってもらえれば幸いだ、と語っている。
Urban Canary