実際に、人間の表情や動作を解析することによる行動予測や予兆検知は、世界中のさまざまなラボや企業で研究が進められるホットな分野だ。
街角に設置された防犯カメラからの犯罪予測や高齢者施設に設置された見守りカメラからの転倒予測などの成果がすでに実証済みだ。
こうしたなか、Silver Logic Labs(SLL)は、映像解析により人が何を感じているかを把握するAIを開発した。今回はその画期的な研究成果をご紹介する。
・カメラ映像の毎秒毎秒の変化から人の感情を判定
SLLの研究チームは、カメラの映像から人間の微細な動きを解析し、その人が何を感じているかを判断するアルゴリズムを作成した。
このアルゴリズムは、人が嘘をついているかどうかを見抜く。例えば、2人の男性がキスをする映像や、犬がおもしろおかしく車にぶつかる映像を観たときに、言葉では嫌悪感を示していても、映像解析からは喜びの感情が判明することがあるという。
この技術では、カメラによる映像を毎秒毎秒で比較し、人の微細な変化を分析している。その判定精度は驚異的で、最も低い場合ですら89%だったとのこと。
・コンテンツ視聴の反応を細かく分析
SLL開発の技術のさらに驚くべき点は、パソコンに搭載されているWebカメラを活用した分析を可能にしたことだ。Web上のコンテンツへの興味を分析する際にも、閲覧者は撮影されていると意識することがないため、自然な反応が得られる。
現在はニールセンなどがアンケートを駆使しておこなっている視聴率調査も、視聴者の反応を直接収集・分析できるようになるだろう。さらには、映画やテレビ番組での特定シーンに対する興味も判定できるようになる。
この技術は、人々の感情、興味を見抜くだけでなく、ほかにもさまざまな可能性を秘めている。
例えば、ヘルスケア分野における予兆診断だ。脳卒中を発症すると最初に動きの小さな変化が起こることがわかっている。これらはほとんどの場合、本人ですら気づかない。カメラを設置し、歩行に1%の変化があることがわかれば、脳卒中の早期発見につながる。
教育現場での活用も有用で、受講時の反応を見ることで教師や教育コンテンツが生徒にマッチしているかや理解度が判断でき、より個人に適した教育プログラムが提供できるようになるだろう。
このように、SLLの映像解析技術の応用範囲は広く、多くの産業へのインパクトが予想される。