静止画に比べ、動画コンテンツの方が訴求率も高い。そんな動画コンテンツニーズの高まっている現状を加速させるツールが、2017年7月31日にリリースを迎えたばかりの「RICHKA(β版)」だ。
本ツールは、最近SNSでよく見かけるニュース性動画を最短1分で簡単に作成することができるというもの。そこで今回は、本ツールを開発した動画制作会社、カクテルメイク株式会社の代表取締役、松尾幸治(まつおゆきはる)氏に開発の経緯と狙いについて話を聞かせてもらった。
Q.1 「RICHKA」の生まれた背景について簡単に教えてください。
弊社は元々動画制作会社です。スマートフォン、SNSの発展に伴い動画制作のニーズが多様化していく中でさまざまな動画を制作させて頂いてきました。
私たちがご相談を頂く中で、お客様のニーズに十分に応えられなかったのが、主にメディアの企業様からの「もっと動画コンテンツを簡単に制作したい」という声です。取材などの記事コンテンツを作成した流れで動画を作ることができれば、もっと記事をたくさんの人に見てもらえます。
しかし、クリエイターが制作する時間がかかりますし、そもそも動画の価格感はメディア運営の採算に合いません。この課題の解決手段として、極力人の手を介さず短時間で動画を制作するシステムがつくれないかというアイディアから開発が始まりました。
Q.2 今や誰でも簡単にSNSに特化した動画を制作できるアプリやツールは出回っていますが、「RICHKA」がそれらと違う点を教えてください。
顧客が法人企業であることと、オリジナルテンプレートである点です。コンシューマー向けの動画制作アプリやツールは普及してきましたが、法人が使うとなると企業イメージが崩れないことやクオリティコントロールが必要になります。
そうすると、利用できるツールは本当に限られます。また、法人向けに展開されているテンプレートを選んで動画作成するツールは使ってみると意外と操作が難しいです。
共通のテンプレートを利用するため、企業のブランディングにも不向きです。「RICHKA」は、既存のツールの課題を解決しながら、動画制作をしたことがない人でも簡単に使えるように設計しています。
オリジナルテンプレートはクリエイターが1社1社しっかりとつくります。エフェクトやモーションなどの表現もテンプレート側に極力もたせることで、難しい操作をする必要がないので、UIもシンプルにすることができました。
「RICHKA」は動画制作ツールでありながら、ユーザの作業は動画に表示させる文章を考えることがメインとなっています。
Q.3 テキストコンテンツのURLを用いて動画に変換できるとのことですが、どのような仕組みで動画に変換されるのでしょうか?変換時のズレなどはないのでしょう か?
正確には、URLだけで変えてくれるというよりも「まったくのゼロから動画をつくる必要がない」という方が近い表現です。ブラウザ上の入力欄にURLを入力すると、コンテンツ中の文章や画像を解析して、動画の材料となる素材を抽出し、簡単な構成までしてくれます。
まっさらな状態から動画を作ろうとすると、なかなか取りかかりが難しく時間がかかってしまうのですが、ヒントがあるとあとはそれを組み替えていくだけなので、動画制作のハードルが一気に下がります。URLからの抽出機能は、動画の骨組みをざっくりとつくってくれる、そんな機能です。
Q.4 近年「料理動画」をはじめ、動画コンテンツの競争が激しい時代に、「RICHKA」は「動画メディア業界」にどんな価値を提供できると思われますか?
大前提ですが、あくまで動画というのは情報伝達のツールの1つでしかないと思っています。
テキストなのか、画像なのか、動画なのか、将来的にはAR/VRなども含まれると考えていますが、それぞれの伝えたい情報に適したツールが消費されるのだと考えています。
その中で今SNSで伸びているコンテンツは、TVCMのような映像表現のコンテンツというよりは、弊社でニュース動画と呼んでいる「読みものとしての動画」だと考えています。映像ありきというよりは、テキストありきです。
その点でいくと、すでに良質なコンテンツをもっていらっしゃる既存メディアの方々は圧倒的に有利ですが、動画の制作リソースがありません。そこに「RICHKA」のようなツールが活用されることで良質なコンテンツが編集の力で動画になり、「もっとたくさんの人に届く」「従来の表現だと伝わりづらかったものが動画の力で多くの人に知ってもらえる」、そんなお手伝いができたらと考えています。
Q.5 御社自身も今後、「RICHKA」をAI機械学習による「動画生成プラットフォーム」へと発展させる予定とのことですが、今後ずばり動画コンテンツ市場は今の状況からどのように進化していくと思われますか?
個人的な見解なのですが、大きく2つあります。1つ目が、テレビのようなハイクオリティなコンテンツがインターネットコンテンツに最適化されていくケース、2つ目が、メディア記事やブログのようなテキスト情報が動画コンテンツにリプレイスされていくケースです。
前者は人間の高いクリエイティブ性が必要だと思いますが、後者はもっともっとシステム化できると考えています。「RICHKA」は後者です。
AI機械学習を活用した自動生成技術が格段に進化すると、例えば動画コンテンツが個人に最適化された状態で、その場で生成されて提供されるということも起きてくるでしょう。これまでインターネットがさまざまなコンテンツをパーソナライズ化させてきたように、動画コンテンツも同様に発展していくと考えています。
一般的な動画制作会社とは違い、まさに同社の掲げる「動画」×「IT」というミッションを体現したツールが「RICHKA」なのだ。動画メディア業界、引いてはこの先の我々のコンテンツの消費の仕方すら左右するキラーツールになるのかもしれない。
(取材・文 Doga)
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