開発を手がけたのは、サービスと同名の企業scouty。代表取締役の 島田 寛基(しまだ ひろき)氏は、京都大学とイギリスのエディンバラ大学院で人工知能を学んだ経歴の持ち主。その後、24歳の若さで、この会社を立ち上げだ。
一見、AIとは関係なさそうな人事サービスの分野。同氏がそこに着目したのは、なぜだろうか。起業の経緯から今後の展望まで、たっぷりと語ってもらった。(写真:中央が島田氏)
・ネット上に公開された情報から人工知能が最適な企業をセレクト
Q1:まずは、このようなサービスを提供するに至ったきっかけから、お聞かせください。
自分の身の回りで突飛な才能を持っていても、「大学を卒業したから、とりあえず就活をして、自分の専門とは関係のない大企業に行こう」「趣味を仕事にできるのは一部の人間」という人が、あまりにも多いことが疑問でした。それなら「データを使えば、その人すら気づいていない、自分の本当にやりたい仕事を発見できるのでは?」と思いついたのがきっかけです。
私は、エディンバラ大学院で人工知能を研究しました。「人工知能で新しい価値を作る」というテーマが、自分の中にあったからです。HR(ヒューマンリソース)は未知の領域でしたが、(自分のテーマを実現するため)このサービスを作ろうと決めました。
Q2:「scouty」とは、どんなサービスなのでしょうか。仕組みや特長など、詳細について改めて教えてください。
「scouty」は、従来の転職サービスとは異なり、ユーザーによる登録が不要です。すでに自分がネット上に公開している情報(SNSやビジネスSNS、GitHubなどのレポジトリ共有サービスやブログに投稿された内容)を自動的に取得して、人工知能でその人に最適な企業とマッチングします。
また、その人が退職しそうな時期も、人工知能が予測し、適切なタイミングで候補者が公開しているメールアドレスへ、スカウトメールを送ります。転職活動すらすることもなく、自分が次の環境へ興味を抱いたタイミングで、マッチした会社からのスカウトが自分のもとに届き、転職する。そんな世界を目指しています。
・自分すら気付かない天職に巡り会える
Q3:本サービスを利用することで、ユーザー(転職希望者と企業)は、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
転職希望者の一番のメリットは、 自分すら気付かない天職に巡り会えることです。仮に転職活動をしていなくても、その人がもっと活躍できる環境は、存在するはず。ネット上に情報を公開することで、そのような可能性に出会うことができます。(中略)
企業側は、ターゲットが転職潜在層のため、他の媒体ではお目にかかれないような、自社にマッチした人材に出会えます。「scouty」ではあえて履歴書を使わず、つぶやきや投稿・経歴、自分の書いたコードなど、豊富なオープンデータから企業のマッチングを行っています。そのため、自社に興味のありそうな人材だけをターゲティングして、スカウトできますし、成功率も高くなります。また、転職活動をしていない人もスカウト可能なので、比較的優秀な人を、他の企業と取り合いにならずに、リクルートすることができます。
Q4:現在はベータ版ですが、正式版リリースはいつ頃になるのでしょうか。それまでの展開と併せて、教えてください。
正式版リリースは、来年春から秋頃の予定です。現在はソフトウェアエンジニアが中心ですが、正式版からデザイナーやディレクター・営業職など、職種の幅も広げていくつもりです。
それまでは、マッチングアルゴリズムと退職率予測アルゴリズムの精度アップを中心に、スカウトメールの分析機能や、スカウトメール自動校正機能といった周辺機能を、拡充させていきます。
(取材・文 乾 雅美)
scouty(ベータ版)