今回ご紹介するのは、そんな社会を是正するために立ち上がった勇気あるサービス。企業に対する改善要求を、ユーザーに代わって実行する「ブラゼロ」だ。企業に労働者側の要望をきちんと伝えつつ、雇われ方の根本的な変革をめざしていくという。
提供元は、2016年設立のナックルボール。代表取締役CEOの日野 雄介(ひの ゆうすけ)氏に、詳しい話を聞いた。
・企業への改善要求をFAXまたはメールで伝達
Q1:まずは、日本のブラック企業とその被害現状に対する、御社の見解をお聞かせください。
ブラック企業がニュースになるのはほとんどが大手企業の場合であり、知名度の低い中小企業、特に地方には、ニュースに登場する以上のブラックな企業が、数多く存在しています。
ブラック企業とは、ブラックな経営者のマインドが管理職、社員へと伝わり、そして会社全体が真っ黒に染まっていく組織です。そういったブラック経営者に対し、民間から何かしらのプレッシャーを与えない限り、根本的にブラック企業が減ることはない、と思っています。
Q2:「ブラゼロ」とは、どんなサービスなのでしょうか。仕組みや特長など、詳細について改めて教えてください。
ユーザーがブラゼロに登録したことを、ユーザーの名前を明かさずに、勤務先へFAXかメールで伝えます(任意・無料)。これだけで企業は、自分の会社が第三者を巻き込んで「見られている」という意識を持ち、危機感を感じてくれるはずです。
有料会員になると、会社からの不当な扱いを具体的に記入することができます。それを改善してほしい旨を、ユーザーの代理で「ブラゼロ」が、FAXかメールで企業へ伝えます。3か月ほどで改善がされなかった場合は、関係監督省庁へ通告する旨も記載しています。
・アプリ利用者ゼロをめざして
Q3:サービス構築にあたって最も苦労したのは、どんなところでしょうか。
このようなサービスは他に類を見ないので、ユーザーがダウンロードした後に気軽に登録し、サービスをフルに活用できるよう、心理的ハードルを下げるUX/UIをめざしました。
しかし、リリースのスピードの方を優先したため、今のところまだ満足はしていません。iOS版のリリースに向け、これからもっとブラッシュアップしていくつもりです。
Q4:「ブラゼロ」がめざす社会とは、どんなものでしょうか。今後の展開と併せて、未来の展望をお聞かせください。
雇われている人たちが、企業をチェックするという風潮が一般的になれば、ブラック企業は減っていくはず。そのためにもまず、ユーザー数を増やしていきたいと思います。それに反比例してブラック企業は減り、ゆくゆくはユーザー数も減少していくのが、理想の姿です。
要するに、結果を出すほど、自らの存亡を危うくするという事業を始めてしまったわけですが(笑)、実際にそうなることを切に願っています。
ITならではの特性を生かした「ブラゼロ」。ブラック企業で悩む多くの人に、このサービスを知ってほしい。そして、勇気を持って利用していただきたい。日野氏が願うような社会になることを、心から願っている。(取材・文 乾 雅美)
ブラゼロ