デジタルの交流は、手軽で簡単だ。それでもどこか寂しさが残るのは、相手の存在を感じられないから。どんなに多くの文字や声を届けても、確かに“寄り添っている”という安心感にはかなわない。
そんなカップルにぜひ知ってほしい製品が、この「ARCandle」。デジタルでありながら、恋人の動きをリアルに感じ取ることができる、世界でただ一つの“存在感”を伝えるデバイスだ。
Indiegogoで資金調達中の本品。はたして、どんなプロダクトなのか。開発元のOOQ inc. (クオーク)代表取締役、上田 大豊(うえだ たいほう)氏に、話を聞いた。
・センサーでとらえた人の動きをLEDの炎で再現
Q1:まずは、このような製品を開発するに至った理由から、お聞かせください。
弊社ではARアプリを開発していますが、どんな風に現実を拡張すべきかについて、ずっと考えてきました。コミュニケーションは、いろいろな形に可視化できます。しかし、言語のコミュニケーションはもちろん、非言語コミュニケーションの中にも分類しにくく、その実重要なやりとりがあることを、意識するようになりました。
意図的なメッセージではありませんが、キャンドルの炎の揺れという形で、存在感のようなものが伝えられることに気づき、製品を開発しました。
Q2:「ARCandle」とは、どんな製品なのでしょうか。仕組みや特長について、改めて教えてください。
「ARCandle」は、人の動きをセンサーでとらえるデバイスです。デバイスの前で人が動くと、Wi-fiとインターネットを介して、遠く離れた大切な人の側に設定された、もう一台の「ARCandle」に伝えます。
人の動きでキャンドルの炎が揺れるのと同じように、相手の動きが離れた場所で、LEDで再現した炎の揺れとなって現れます。
・意図的なメッセージ、余分な機能はすべて排除
Q3:最近はカップルを対象とした、さまざまなコミュニケーションアプリが出ています。それらとの決定的な違いは、どこにあるのでしょうか。
アプリでメッセージを送ったり、非言語のコミュニケーションを行うこともできます。しかし、いずれも意図的で、明示的なメッセージになってしまいます。
キャンドルは常に点灯させているので、使っている間に、そのことをあまり意識しなくなります。無意識のうちにお互いの存在感を伝え合うには、最適だと思っています。
Q4:今後の展開について、教えてください。
まずは、クラウドファンディングでの成功を目指します。たくさん売れるものではないと思いますが、(この製品をきっかけに)少しでも存在感がやりとりされるようになれば、可視化できない部分や言葉にしにくい部分がもっと重要視されるのようになるのではないかと、思ったりもします。
「ARCandle」の役割はただ一つ、相手の“存在感”を伝えること。時に乱雑とも思えるほど、さまざまなコミュニケーションが氾濫する中、このシンプルさはかえって貴重だ。Indiegogoでの支援受け付けは、5月7日まで。多くのサポーターに支持されることを願う。(取材・文 乾 雅美)
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