水の中に身体に有害なレベルのバクテリアが存在するのか知りたいと思ったら、ラボの色層分析、質量分析などの専用機器を使って測定をおこなう必要がある。これには時間もお金もかかってしまう。
・水の中のバクテリアを検知する“生体電子工学の鼻”
ソウル大学校のTai Hyun Park氏らの研究チームでは、人間の鼻の機能に着目し、“生体電子工学の鼻”の開発を進めているという。ラボに場所を限ることなく調査がおこなえるほか、既存の技術よりより感度の高いチェックができる可能性を秘めているという。
・実際に、人間の嗅覚受容体を用いる
“生体電子工学の鼻”には実際に、ラボで培養された人間の嗅覚受容体が用いられており、カーボンナノチューブ製の“電界効果トランジスタ”と組み合わせることによって作動する。
私たち人間の鼻が水中のバクテリアが生み出すかび臭いを感知するのは、ゲオスミンと2-メチルイソボルネオールという2種類の分子のため。人工鼻ツールは水の中に存在するこれらの小型分子の存在をリアルタイムで検知する。
・ニオイ検知の精度は高い
人の鼻はさまざまなニオイが交じり合うと、特定のニオイを判別するのが難しくなるが、このツールだとそんな条件下においても、水1リットル中に10ナノグラムレベルの濃度すら検出できるという。
ただし、人間の鼻の受容体は約400種類のニオイを嗅ぎ分けることができるが、このツールの場合、種類が限定されてしまう。チームとしてはさまざまなニオイ分子を判別できるツールの開発を進めていきたい意向だ。
・将来的には、特定の病気や偽造薬の検出などにも
この技術が確立すれば、特定の病気の兆候や偽造薬の判別、香水の開発に用いたり、ワインやコーヒーなど香りを楽しむものの、“ニオイデータベース”を構築したりすることに有用そうだ。
bioelectronic nose