その有用性を高く評価したのが、ソーシャルビジネス成長応援融資「CHANGE」。主に社会や地域の課題解決にチャレンジする組織支援のためのこのプログラムから、資金調達が実施されることになった。これを受けた開発元のPIAZZA社では、新たな段階に入るべく、現在準備を進めているところだという。
取材に応じてくれたのは、代表取締役の矢野 晃平(やの こうへい)氏。融資後の展開を軸に、さまざまな話を聞いた。
・つらい気持ちを救ってくれたご近所の人の声
Q1:まずはさかのぼって、「PIAZZA」提供のきっかけから、お聞かせください。
私には2人の子どもがいて、下の子どもは産まれてすぐ、事故に遭いました。今は元気に駆け回っていますが、当時は看病に上の子の育児、そして仕事と、精神的にも肉体的にもつらい毎日でした。
そんなとき、同じマンションの方が「最近元気ない?大丈夫?」と声をかけてくれました。挨拶するぐらいしか知らなかった方のその一声が、ずっしりと僕の心に響いたのです。(中略)
この経験から、街の人と人が出会い、心地よいつながりを育めるプラットフォームを作りたい、という想いが生まれ、「PIAZZA」を立ち上げるきっかけになりました。
Q2:今回の資金調達によって、どのような展開をされるおつもりですか?
(都市コミュニティの希薄化という)社会課題を解決するために、地域をつなぎ、暮らしの安心・安全を提供するソーシャルインフラとして、「PIAZZA」を開発しました。
2015年8月にリリース以降、サービス運営や300人以上に直接ヒアリングを実施する過程で、「PIAZZA」の普及による課題解決、さらにビジネスの可能性が見えてきたため、追加の資金調達を実施しました。この資金の大半は、今後サービスを大きく成長させるために必要な人材へ、投下していく予定です。
・海外での展開も検討中
Q3:海外では現在、Nextdoorがm&aを拡大中で、地域コミュニティSNSのあり方について意見が割れているようです。こうしたSNSを大手企業が運営することに関して、どう思われますか。
大手のNextdoorを始め、過去には国内でも大手がローカルSNSに参入していましたが、ビジネスとして成功しているケースがないことを理解しています。
弊社は地域の商店からの登録料や広告料をいただく、ローカルアド市場に身を置いています。この市場は、いまだにチラシやフリーペーパーなどの紙媒体が主流です。(だからこそ)ITを駆使して、より安価で効果的な、ローカルにおける情報発信手法を提供していきたい、と考えています。(中略)今後このローカルSNS/アド市場は盛り上がっていくと予想しており、弊社はそれをリードしていきたいと思っています。
Q4:リリースから1年半経ち、「PIAZZA」も新たな段階に来ていると思われます。これから、どのようなサービスにしていきたいとお考えですか?未来の展望について、お聞かせください。
この1年半、日本有数の人口流入が激しい再開発都市(勝どき・豊洲・武蔵小杉)で、ITを駆使したコミュニティ創出のノウハウを培ってきました。これをベースに、弊社のミッションでもある「人々が支え合う街創り」をかなえるべく、さまざまな都市で「PIAZZA」を展開していきます。
また、(中略)近い将来、海外で都市化が進行している地域での展開も、視野に入れています。世界で最も人口が密集している都市である東京で、この事業を始めたのは、今後の世界展開に向けてでもあります。ただし、どんなに範囲が広がろうとも、その街のステークホルダーの声を大切に、PDCAを回しながらサービス改善に取り組む姿勢は、これからも変わりません。
イタリア語で広場という意味を持つ「PIAZZA」。「気づけば人と人が支え合っている、街の仮想広場にしたい」と矢野氏は語る。これから、どんな世界を見せてくれるのか。同社の新たな躍進に、期待したい。(取材・文 乾 雅美)
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