近年、医療業界でもテクノロジーを活用しようという試みが取り組まれているが、マサチューセッツ工科大学のチームが開発中の、“身体に摂取できるバッテリー”もその一つ。
これまでにも“体内に薬物を送達する仕組み”が考案されてきているが、ツールの動力源となる電池の問題、特に電池の寿命や人体への有害性が大きなネックとなってきた。
・“レモン電池”の原理がベースに
「人体への負担が少なく、コストも抑えた方法はないか」と考えられたのが、“胃酸を使ってバッテリーのエネルギー源とする”方法だった。
ところで、“レモン電池”という有名な科学実験を知らないだろうか。これは亜鉛と銅の小片をレモンに差し込むと、クエン酸が電解物の役割を果たし、2つの金属間に電流を生み出して、ちょうど電極のような働きとなる。発生した電気エネルギーはLEDを点灯するに十分な量だという。
・温度センサーとトランスミッターを内蔵
この原理を生かしたのが今回のプロジェクト。スケールを小型化して、体内摂取できるデバイスサイズにし、内部には温度センサー、900MHzのトランスミッターを内蔵。レモンの代わりに胃酸が亜鉛と銅の間に電流を発生させ、これがデバイスの動力源となる。
ブタでテストしたところ、体内温度の読み取り、取得データの12秒間隔のワイヤレス送信、2メートル範囲への受信、すべてが可能だったという。
ブタの腸管を通り抜けるまでに、平均約6日間かかったとのこと。胃を過ぎ、小腸に入ると、酸度が弱まるため、ピーク時の1%程度のパフォーマンスしか発揮できなくなるものの、長期間にわたって集められたエネルギーによって、その後のデータ送信も可能(ただし、12秒/1回頻度以下とはなる)。
・今後はサイズダウン化、他のセンサーの導入も
現状の形状だと、長さ約40×幅12ミリメートルのサイズで、薄い金で外側を覆われている。今後は電気回路構成をカスタマイズすることで、サイズは約1/3に縮小し、他のセンサーを内蔵できるようにするほか、幅広いバイタルサインや病気の治療に用いられるようにしていきたい意向だ。
ユーザーがスマートフォンなどで、自分のバイタルサインを常時チェックする……なんていう時代も来るのかもしれない。
MIT stomach acid battery