360°のパノラマでいつもと違った写真が撮れるカメラが話題になっている。
カメラで撮った写真を傘に活かしたのが、PARTYがリリースしたPANORELLA(パノレラ)だ。
360°写真を傘の内側に映し出すことで、綺麗な景色や自分のお気に入りの写真を雨の中でも見ることができ、気分を晴れやかにさせてくれる。
そのパノレラの開発秘話から傘にプリントする方法まで、PARTYのプロジェクトマネージャーの阿久津 達彦さん、エンジニアの村上守さん、渡島健太さんの3名にお話を伺った。
僕たちの生活に、より身近なものできちんとお客様に届くものを作りたかった
Q1.PANORELLAを開発した背景を教えてください。また、なぜ傘だったのでしょうか?
女優・タレントでエンジニアでもある池澤あやかさんが、PARTYに一時期ジョインした際に何か一緒にやろうと提案したのがはじまりです。
ちょうどその時期は360°カメラが発売されて間もない頃でした。だったら360°カメラを使って、僕たちの身近なもので何か作れないかなと考え始めました。
360°のパノラマ写真を活かせるものを作りたいなら、球状である必要があることが最低条件だと思い、幾つか候補を出していきました。その中で出てきたのが「傘」でした。
360°を活かすならVRなどで勝負することも考えたのですが、僕らは少し違った視点・ひねったアイデアを出すのが得意なこと、まずはBtoCできちんとお客様に届くものが良いはずという理由もあり、パノラマ写真が活かせる傘に決定したのです。
Q2.開発中大変だったことはありますか?
普段、僕たちの業務はBtoBのクライアント向けのお仕事をするのがほとんどでしたのでBtoC事業は大変でした。企画自体は2016年の3月から始まっていたのですが、初めのプロトタイプが完成したのが6月。
「そもそもシータのような360°カメラを持っている人が少ないのでは?」という疑問から始まり、「傘を作っている業者はどうやって見つけるのか?」「どのような運用方法でパノレラをリリースして販売していくのか?」など、私たちの会社ではやったことがないことだったので大変でしたね。
クライアントの案件とパノレラ制作との作業バランスを大切にしながら進めていきました。大変でしたが、いつもとやることが違うからこそ刺激的で楽しかったです。クライアントの業務を行いながらも、これからは自社で研究して自社で開発をしていかないと業界に追いつけなくなる。そう会社全体が感じていたので、今回のパノレラは良い経験になりました。
グレイトなアイデアを1本1本、丁寧にカタチにする
Q3.パノレラの中の写真を撮るカメラマンと傘を作る職人などはどのように見つけてきたのでしょうか?
写真は「コミュニティ」を見つけたことがきっかけです。
「コミュニティ」とは、FlickrとかTwitter、Facebookなどにグループとして作られている自分の作品掲載するカメラマンのコミュニティです。グループ内の外国人カメラマンたちに20〜30件ほどメールを送ってアプローチをしました。特に断れることもなく、むしろ「グレイトアイデア」だと言われました。
傘自体に関しては以前から提携している業者さんを通じて、傘1本単位で発注を受けてくださる職人さんを紹介していただきました。ちなみに傘を作っているのは、群馬県にある会社のおじさんらしいです。仲介する方がいらっしゃるので僕たちは会ったことはありませんが。(笑)
そうやってコミュニティや業者さんを見つけられたことで、パノレラ制作の不安面が解消されたことや目標が、より明確になったことで作業スピードも早くなりました。
Q4. 傘にどうやって360°の写真をプリントしているのでしょうか?
インクジェットの転写をしています。具体的に言うと「昇華転写」というプリント技術です。昇華型インクを使って360°写真を左右反転で印刷し、転写面に合わせてヒートプレス機で熱をかけることで傘にプリントしています。
それから1面を一気に貼っているわけではなく、傘の内側の骨組み部分にある三角形8頭分を1枚1枚、プリントしています。さらにそこから傘の形に合わせて、間を縫っていく工程があるので作業時間は1週間から2週間かかります。
PARTYだからできる360°感を大切にしたい
Q5.現在のパノレラの課題や、これからの展望について教えてください。
パノレラの課題は360°カメラを持っているお客様に限られることです。
その点を解消するには、360°カメラが撮れるスマホアプリの普及、もしくは自社でカメラが無くてもできる仕組みを作ることが必要だと思っています。
実際、GoogleMapのストリートビューを使って傘にプリントするプロトタイプを考えている最中です。パノレラをもっと知ってもらうためにも、様々な視点から考えています。
また今後はBtoC(個人のお客様)だけでなく、BtoB(対企業)の向けて発信していきたいです。具体的には企業とコラボレーションをしていければと思っています。パノレラは大口の方が安く購入できますから。
その点を活かしながら現在は企業の反応を増やしている最中です。普通のプリントをするだけなら僕らがやる意味がないので、しっかり360°感が出せるものを企業と共に作りあげていきたいですね。