スタートアップの皆様は、契約書をどのように準備なさっていますでしょうか?相手方から提示されたものにサインするだけでしょうか?それとも、インターネットで契約書のひな形を探し出し、固有名詞だけ変えて相手方に提示することもあるでしょうか?
スタートアップの皆様にお送りする【弁護士に聞くスタートアップ】シリーズの第2回は、引き続き契約書の重要性についてお送りいたします。
契約書の個別性
たいていの契約であればネット上で契約書のひな形を見つけ出せるにも関わらず、弁護士に契約書の作成やレビューを依頼するのはなぜでしょうか?それは契約書が極めて「個別的」なものだからです。つまり、同じ契約であっても、
①自己の立場及び自己の特性
②相手方との関係及び相手方の特性
③ビジネスの規模・特殊性
等の様々な要素によって、契約書をアレンジしていく必要があります。そして、そのアレンジもビジネスの目的が達成できるようにしつつ、法令や判例等に違反しない有効なものになるように工夫する必要があります。
攻めの法務!
この契約書の個別性への配慮を欠くと、思わぬところでビジネス上の失敗を起こすこともあります。逆に言えば、契約書を当該ビジネスに即してきちんとアレンジしていけば、ビジネスの可能性を広げることができます。
このように、契約書の作成・アレンジを含む法務というものは、自社を法律違反のリスクから守るというディフェンスの側面だけではなく、自社のビジネスの可能性を広げるという「攻めの側面」ももっているのです。
具体例―システム開発契約―
例えば、前回お伝えしたシステム開発契約では、従前はプロジェクトの最初に1通の請負契約書を交わし、ベンダが全ての工程を一括して請け負う方式が主流でした。しかし、皆様ご存じのとおり、システム開発においては、当初想定していた作業は、作業が進行するにつれて、量質共に変っていくことは自然です。
また、ベンダ側が行うべきことは抽象的にしか定まっていないことも多いかと思います。そのため、この一括方式では、ベンダ側からみれば、当初の請負代金で当初想定していた以上の作業を行う義務が発生するリスクが出てくるのです。
したがって、もちろん取引ごとにどちらの方式が適しているかという検討は必要ですが、上記のリスクだけを考えるのであれば、例えば①企画・要件定義段階、②開発段階、③運用段階のそれぞれで契約を締結し、それぞれの段階で具体的な条件を検討することも考えられます。
まとめ
このように、契約書の作成・アレンジを含む法務というものは、自社を法律違反のリスクから守るというディフェンスの側面だけではなく、自社のビジネスの可能性を広げるという「攻めの側面」ももっているものです。
スタートアップの皆様にも、シード段階からディフェンスだけではなく、経営のパートナーとしての弁護士を付けてビジネスを成功させていただきたいと思っています。
弁護士 山本
【連載:弁護士に聞くスタートアップ1】ミスをすると億単位の損害がでることも…契約書に関する重要性について