これまで国内各地のワークショップでしか、お目にかかれなかった本品。ユーザーからの熱い要望に応え、晴れて正式販売する運びとなった。
開発元は、for Our Kids。「PETS」の製作に当たっていた企業、デザイニウムの出資を受けて、今年6月に設立された。取材に応じてくれたのは、代表取締役の中尾 瑛佑(なかお ようすけ)氏。開発の経緯や苦労など、さまざまな話を聞くことができた。
・ブロックの組み合わせで体感的にプログラミングを学ぶ
Q1:まずは、製品開発のきっかけと経緯からお聞かせください。
「PETS」のハードの部分が形成されたのは、2015年頃です。「最初に子どもたちにプログラミングを教えるのに、適した教材は何か?」という問いかけから生まれました。
その後、Tokyo Motion Control Network(T.M.C.N)という、センサーデバイス好きのコミュニティでワークショップを開催してみよう、という流れになりました。そこに参加していた私が、合同会社ザワッグルという教材を開発する会社で、新たにArduinoを子どもたちに教える教材の開発をしていたところ、T.M.C.Nの理事長の目にとまり、カリキュラムを開発してほしいと、声をかけられたのがきっかけです。
Q2:ネットワークも電子機器も一切不要で、プログラミングが学べるそうですが、どのようにして知識を習得するのでしょうか。稼働の仕組みと併せて、教えてください。
「PETS」と呼ばれるロボットの上に、3個のブロックを差し込めるエリアと、9個のブロックを差し込めるエリアがついています。
そこに、命令ブロックと呼ばれる前進、後退、左折、右折、ループを呼び出すブロックを組み合わせて、課題カードに書かれているコースをクリアしていく過程で、プログラミング的な考え方を、体感的に学んでもらう仕組みです。
・初回バージョンは1月下旬頃から順次出荷
Q3:開発に当たって最も苦労したのは、どんなところですか。
やはり、ハード、ソフトの両面において、リアルな体験の中から生まれる想定外の出来事を繰り返しながら、チューニングしていく作業が大変でした。
ハードウェアにおいても、小さな子どもは前と後ろといった区別がつきにくいため、ブロックの形などもわかりやすいように、形状を変更しています。
カリキュラムでは、子どもが主体的に課題を解いていく過程で、自分で気づいたり、ものの見方を発見することを狙いました。その狙い通りになっているか、細かく難易度調整したり、説明の仕方なども変更しています。毎回ワークショップのたびに、カリキュラムを一から作り直していました。
Q4:製品の正式出荷は、いつ頃になるのでしょうか。それまでの展開と併せて教えてください。
今回のバージョンは、1月下旬頃から順次、出荷する予定です。
その後は、お客さまからフィードバックをいただきながら、大量出荷できる体制やプロダクトレベルを引き上げて、来年3月に、海外のクラウドファンディングに出す予定です。それを受けた後、来年の中頃から、正式に展開していくつもりです。
段ボールのおもちゃ箱のような、素朴さがかわいい「PETS」。初めてプログラミングに触れる子どもたちには、ぴったりの形状だ。どんな勉強でも大切なのは、楽しむこと。そんな要素が、本品には余すことなく表現されている。(取材・文 乾 雅美)
PETS(先行予約販売サイト)