しかし、実行に移すのは、なかなか難しい。日々の仕事で忙しい都市在住者にとって、作物を育てる場所や時間を作るのは、容易なことではないからだ。
そんな人にはぜひ、「FARMFES(ファームフェス)」を利用してほしい。ウェブ上で気軽にマイ農場を持てるこのサービスでは、農場に自分の名前を付けたり、作物が育つ様子をホームページからチェックできるようになっている。場所にも時間にもとらわれず、簡単に農業体験ができる、デジタル世代のためのシステムだ。
サービスの事前登録は、10月21日に始まったばかり。提供元であるFARMFES、代表取締役の小平 勘太(こびら かんた)氏に、早速詳しい話を聞いた。
・生産者と消費者が制約なく自由に契約できる場
Q1:まずは、このようなサービスを提供するに至ったきっかけから、お聞かせください。
これまで自分自身が、農業生産法人の経営ならびに流通事業で農業に関わってきましたが、近年の温暖化に伴う環境変化や少子高齢化による消費の変化など、農業生産者をとりまく経営は安定していません。
そこで私たちは、生産者と消費者そして、国内外の一般法人とが制約なく自由に契約ができて、かつ体験や食育といったコンテンツをマネタライズできるプラットフォームを、提供することにしました。より強い日本の農業を作ることができると考え、サービスを始めたのです。
Q2:「FARMFES」とは、どんなサービスなのでしょうか。
「FARMFES」は、農業生産者と消費者をつなげる、農業生産区画の契約仲介のウェブサービスです。農業生産者は面積当たりの契約料を、収穫前に一括で得ることで収入を安定させ、キャッシュフローを改善することができます。
消費者は、安心安全な生産物はもちろん、農業体験、農地の擬似所有や農家との関係性による満足を得られます。さらに、“モノ”から“コト”へ変化する、消費者のニーズに訴求することも可能です。
・食の楽しさをオン・オフ両ラインでアプローチ
Q3:サービスを構築するにあたって、最も苦労したのはどんなところでしょうか。
最も苦労したのは、ユーザーが求める満足度と、農家側の負担あるいは仕事量のバランスを、どのように保つかというところです。農業経営者としての経験から、農業の労働集約制は理解しており、あまり農家に負担を求めると、結局は農家側に使ってもらえないサービスになりかねません。(中略)
そこが農家にとって過負担にならないよう、適度な仕組みを常に考えていますし、今後はIoTの活用などで、引き続き新しい仕掛けをしていくつもりです。
Q4:これから「FARMFES」は、どのようなサービスに育っていくのでしょうか。未来の展望をお聞かせください。
弊社の提供する新規契約手法(命名権)では従来、農地法の制約で契約ができなかった国外の法人、個人とも農家が直接契約することができます。(これによって)日本の安心安全な農水産物に興味を持つインバウンド顧客と、日本の生産者とのつながりを提供することが可能になります。
今後は、「インバウンド」と「地域創生」、この2つをキーワードとして、「FARMFES」を通じて、日本各地をお祭り(収穫祭)で盛り上げたいと考えています。
加えて、農場の環境データと連動しながら、“生産を自分ごととする”生産予報などが楽しめる仕組みを導入します。オフラインでは、弊社が運営する中目黒のグラムマーケットマルシェを進化させ、(中略)食に対するより楽しいアプローチを、オン・オフライン両方で展開したいと思っています。
政府がTPP法案採決へ向けて動く中、農業への関心は、これからますます高まっていくだろう。まずはこのサービスで、農業の素晴らしさ、食べ物の大切さを知ってほしい。(取材・文 乾 雅美)
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