スタートアップに関わる皆さまは、契約書の作成・レビューはどのようになさっていらっしゃいますか?
ネットでひな形を検索して、名前などを変更してそのまま使用したり、相手方から提示された案を「トラブルになることもないだろう」と考え、そのままサインしたりしていませんか?しかし、その考えが何千万、何億円もの損失につながったら…。
スタートアップの皆様にお送りする【弁護士に聞くスタートアップ】シリーズの第1回は、誰しもが必ず関わる契約書についてお送り致します。
契約書の意義
契約書はなぜ結ぶのでしょうか?保証契約といった特殊な契約を除けば、契約書を取り交わすことは契約成立の条件ではありません。
それにも関わらず、わざわざ契約書を締結するのは、単なる儀式ではなく、ビジネスの進め方を大きく左右するからです。
皆様にこのことをイメージしていただき、契約書についての問題意識を強く持っていただくため、システム開発に関する契約を題材に、契約書がビジネスに与える影響性についてご紹介致します。
システム開発を巡る裁判例
今回は、特に紛争が起きやすい分野であるシステム開発を巡る裁判例(最近の著名な例としてスルガ銀行とIBMの例)を紹介し、次回以降の導入部分といたします。
この事案は、スルガ銀行とIBMとの間で、銀行業務全般をつかさどる情報システムの構築に関する基本合意が締結されるとともに、当該システム開発での個々の局面の権利、義務を規定した個別の契約が締結されたものの、結果として当該システム開発に係るプロジェクトが中止されるに至った事案です。
この事案について、東京高判平成25年9月26日(平成24年(ネ)3612号)は、IBMのスルガ銀行に対する41億7210万3169円の支払を命じました。この裁判例は、学ぶべきところの多い裁判例ではありますが、今回特に皆様にお伝えしたいことは
1:システム開発は紛争が非常に起きやすいため、契約書等を意識して作っていく必要があること
2:いざトラブルが起きたときも契約書で十分に手当てをすれば、傷を小さくすることができることの2点です。
この例は、大企業だからこそ大きな額になったものの、契約時のミスによってスタートアップでも億単位の請求が降りかかることもあり得ます。
支払いについては、次回以降詳しくお伝えしていきます。
(弁護士 山本)