社会になじみにくいと思われがちなADHD障がい児たちだが、興味関心のある事柄には驚くべき集中力を示す傾向がある。その特性を伸ばすために生まれたのが、この「Branch(ブランチ)」だ。テッカブルでも先月紹介したので、憶えている読者も多いだろう。反響があまりにも大きかったため、今回改めて考案者に取材することになった。
インタビューに応じてくれたのは、WOODY(ウッディ)、代表取締役の中里 祐次(なかざと ゆうじ)氏。サービス開発の経緯から現況まで、さまざまな話を聞いた。
・個々に合わせた教育が国内には足りていない
Q1:ご子息がきっかけで考案された本サービス。現在の形になるまで、どのような経緯をたどったのか、教えていただけるでしょうか。
(息子が)2年前、小学校1年生のとき発達障がいと診断され、その際自分の1日を50円で売る東大生のブログを発見したことから始まります。それを機に、自分のあこがれだった東大レゴ部を訪問したのですが、そのとき息子が喜んでいるのを見て、このサービスを思いついたのです。
その後、Facebookで広告を出し、都内の親御さんにアポを取り、課題を抽出しました。先生は現在、15人ほど登録しており、全員私が直接会って審査しています。今はリアルに親御さんと先生がお会いする機会を作りつつ、サービス開発に努めているところです。
Q2:日本における発達障がい児を取り巻く環境について、どう思われますか?
今年の発達障がい支援法改正などに伴って、徐々に理解が広がっていると思います。教育の現場や親の間で、発達障がいに対する理解がほぼなかったことを考えれば、少しずつよくなっているのではないでしょうか。
個人的には発達障がいと診断されても、特にその子に問題があるとは思っておらず、他のお子さん同様、何か才能があるようであれば、そこを伸ばすような教育が増えていけばいいな、と思っています。どちらかといえば発達障がい教育よりも、個々に合わせた教育が国内全体に足りない、という認識です。
・良質な先生の協力が最重要課題
Q3:テスト段階におけるユーザーからの反響、具体的な意見について教えてください。
おおむね、ポジティブな意見です。「こういうのを待っていました!」と絶賛してもらえることが多いですね。(このサービスは)長く続けることが大事なので、現在は淡々と作業を続けています。
Q4:資金調達後の展開について、教えてください。
年内は先生集めとリアルテスト、サービス開発に注力します。来年も3月くらいまでは、ユーザーさんを20~30人程度に絞って、同じような形で行います。システム面ではまだ苦労という苦労は少ないですが、サービス全体の課題として、良質な先生に協力してもらうことに、最も時間を費やしています。
それ以降は、ビデオチャットなどを開発した方がよいのか、そのまま同じことを続けた方がいいのかなど、検討しながら進めていくつもりです。
一人ひとりが違って当たり前。実際、障がいの有無に関わらず、昨今はあちこちで個性に合わせた教育を求める声が上がっている。このサービスがその取っかかりになればと、思わずにいられない。(取材・文 乾 雅美)
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