そういった現状の待ち時間などの問題点や、カルテの管理の手間を解消し、医者と患者双方にメリットがある電子カルテシステムの普及を推進しているのがクリニカル・プラットフォーム株式会社だ。
北欧やイギリスでは電子カルテの普及率は100%だというそうだが、電子カルテの日本の現状や目標について同社代表の鐘江康一郎氏にお話を伺ってみた。
日本での導入率は35%
Q1:日本の電子カルテの現状について教えて下さい。
日本全国で約10万件の診療所がありますが、そのうち電子カルテをご利用されている診療所は約35%と言われています。つまり、約6万5000件の診療所が紙のカルテを使って診療を行っていることになります。
市場シェアの上位は国内を代表する大手企業さまが占めていますが、上位10社のシェアを合わせると全体の約75%で、残りの25%を数十社で分け合うという群雄割拠の状態です。
導入しない理由は?
Q2:なぜ日本で電子カルテは普及しないのでしょうか?
いくつかの理由がありますが、メドピアさんの調査によると、電子カルテを導入していない医師の42%が「コストが高いから」を理由に挙げています。従来の診療所に設置するクライアント・サーバー型電子カルテの導入コストは端末台数等にもよりますが、300万円〜500万円と言われており、開業医の皆さんにとっては決して安くはない金額と言えます。
そのうえ、利用いれば収入につながる医療機器(例:心電図は1回使えば1300円の収入)とは異なり、電子カルテを利用しても医療者側にとっては1円の収入にもつながらないため、投資対効果の観点からも導入をためらう人が多くいると考えています。
クラウドとの連携を重視
Q3:普及させるためにどのような取り組みを行っていますか?
やはり、まずは低価格、特に初期費用が低いことが大前提になるのではと考えています。単なるデータの入れ物に何百万円も支払う時代ではないですよね。そのうえで、医療者の誰にとっても使いやすいことが重要だと考えています。
安かろう悪かろうでは、どなたにも長くご利用いただけません。そのため、医療者の皆さんにとって使いやすさを重視したデザイン設計、UI/UXには特に力を入れています。また、クラウドサービスならではとして、さまざまなオンラインサービスとの連携を重視しています。
クラウドサービスの強みのひとつは、外部サービスとの接続が容易であることです。オンライン病気事典MEDLEYとのサービス連携をはじめとして、すでにクラウド電子カルテ「Clipla」では実現しています。そして、これからもさまざまなクラウドサービスとの連携を実現していきたいと考えています。
クラウドとの連携を重視
Q4:今後電子カルテを普及するためにお考えになっているビジョンなどがあれば教えて下さい。
紙のカルテをデジタルに置き換えただけの電子カルテではなく、医療者の手間を省き、患者の利便性を高めることに寄与するサービスを構築していきたいと考えています。当社のスローガンは "Better Quality with Less"です。
前半の "Better Quality" には患者さんのために良い医療を提供しようという思いが、後半の "with Less" には、それを効率的に実現しようという思いが込められています。患者さんが待合室で診察を待つ時間をゼロにしたい。
医療者が紙からデータに打ち直す作業をゼロにしたい。患者さんが会計を待つ時間をゼロにしたい。医療事務の方がその場で診療費を計算するという業務をゼロにしたい。それらがすべて実現できれば日本の医療シーンは大きく変わると思っていますし、それを実現できるだけの技術はすでに揃っていると考えています。
今後の動向に注目だ。
Clipla(クリプラ)- 進化し続けるクラウド電子カルテ