その現状打破への突破口となり得るが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、カリフォルニア・ナノシステム研究所のバーハム・ジャラリ教授率いる研究グループが開発した、人工知能によるがん診断法だ。
・独自に開発した顕微鏡を使用
まず注目すべきは、がん診断に使用する顕微鏡である。これはジャラリ教授自身が独自に開発したものだ。アナログ‐デジタル変換器および広帯域の等価時間サンプリング・オシロスコープの利点をそれぞれ最大限に活かした独自の光子時間延伸技術で動くその顕微鏡は、すでに特許を取得済みである。
顕微鏡のメカニズムについては、フラッシュを発光して撮影するカメラと似ている。レーザーの破裂とともに血管内を流れる血液細胞を撮影する仕組みとなっている。
1回のプロセスはナノ秒、つまり1秒の10億分の1という速さで瞬時に行われる。したがって、1秒間につき3600万枚にも及ぶ画像が撮影・処理されることになる。
・深層学習でがん細胞と非がん細胞を区別
続いて、人工知能の出番である。
一言に人工知能と言っても学習手法はさまざまであるが、ここで使用するのは深層学習(ディープラーニング)だ。
その複雑なアルゴリズムに基づき、データを解析し、大きさ・粒度・生物量を含む計16点の特徴を抽出する。その結果、95パーセントの確率でがん細胞を特定することが可能である。
・細胞を破壊しない
通常、ほんのわずかな時間での撮影には、高照度下での実施が求められる。それに伴い、細胞が破壊され、解析が行えなくなる恐れがある。
一方、今回のがん診断法は低照度下で行われるため、細胞へのダメージの恐れはない。
これを機に、がんに対する知られざる新たな側面の解明に向け、一歩前進することを期待したい。
University of California Los Angeles